スクラップ・ヘブン [DVD]

アーティスト : 加瀬亮/オダギリジョー/栗山千明 
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感想 : 163
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2005年 日本 117分
監督:李相日
出演:加瀬亮/オダギリジョー/栗山千明

警察官のシンゴ(加瀬亮)、清掃員のテツ(オダギリジョー)、薬剤師のサキ(栗山千明)は、ある日偶然乗り合わせたバスで、バスジャックに遭遇する。犯人(田中哲司)は自暴自棄になった議員秘書で、止めようとしたテツは銃で撃たれ、衝撃でサキは片目の義眼が外れる。シンゴは警察官にも関わらずぶるぶる震えているだけ。結局犯人は、その場で自殺する。3か月後、シンゴは偶然テツと再会。二人は意気投合し、憂さ晴らしのため正義の「復讐代行屋」を始めるが…。

キャストは良い。たぶん当時勢いのある若手俳優の豪華共演だったんだと思う。ただ、現状に不満を持つ若者が面白半分で暴れた結果悲惨なことに…的な映画は基本的にイライラすることが多く、本作もそこはモヤモヤしかなかった。自分が10代くらいだったら共感できたかもしれないけど、すっかりおばちゃんになった今は、二十歳過ぎて中2をこじらせたような若者の蛮行をかっこいいとはとても思えない。

テツは、要介護の父親が施設に入っており、その父親がそうなった理由が地下鉄サリン事件の被害者で退職に追い込まれて(このへんちょっと意味がわからない)というのはさておいても、なんとなく状況的に底辺なのは伝わり、鬱屈を抱えるのもわからなくない。とはいえオダギリジョーがかっこよすぎるのはちょっとマイナス要素だったかもしれない。栗山千明演じるサキは、片目が義眼であるという欠落を抱えている。地方の旧家の出らしく、家族のプレッシャーなど、彼女の鬱屈もなんとなくわかる。リケジョなので爆発物をこっそり調合している。

問題は警察官のシンゴ。ヒーローに憧れて警察官になったが庶務課に配属され腐っており、花形の捜査一課に異動を希望している。ところがバスジャックの現場で、刑事でありながら一番ポンコツだったのは彼。その後も、地下道で女性がしつこい勧誘に絡まれていても見て見ぬふりをするなど、臆病なまま。そういう連中に殴り込みをかけたり、バスジャックにも平気で話しかけて撃たれたテツの破天荒さは、彼の目にはかっこよく見えたのだろう。一緒に復讐代行業を始めるが、しょせん虎の威を借る狐。

二人は公衆トイレに復讐代行の落書きをしてまわり、トイレで依頼を受けるように。虐待されてる子供を助けるあたりはまだコミカルで救いがあったけれど、それでちょっと良いことをしているつもりになっていたシンゴはさらにエスカレート。やがて二人は交番を襲い拳銃を盗み、それをトイレに隠す。ところがその拳銃を使ってホームレスがオヤジ狩りの若者を射殺する事件が発生。拳銃を盗まれた警官は自責の念から自殺。捜査一課のベテラン薮田刑事(柄本明)はシンゴが関わっていることに勘付いており、自分で落とし前をつけろと彼をぶん殴る。しかし結局、テツが罪をすべてかぶり自首してくる。

とにかくシンゴがつまらない人間すぎてイライラ。「想像力」という言葉がキーワードになっており、彼らは想像力のない大人たちや社会に憤りを感じているらしいが、もっとも想像力が欠如していたのはシンゴ自身であったことが終盤で露呈する。まあそうですよね、警察官なのに、仕事の場では臆病で役立たず、それは自分自身の問題なのに責任転嫁して組織批判、そしてやることといえば裏で憂さ晴らしの犯罪、それを警官の自分がやることの罪深さには全く思い至らない。サキに「助けてくれ」「誰も俺を助けてくれない」などと泣き言を言う場面も最悪。好き勝手なことしておいて、なんで他人が自分を助けてくれると思うんだ。

結局、シンゴの愚かさを描きたかったというなら、納得。エンディング曲のフジファブリック「蜃気楼」はとても良かった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  邦画
感想投稿日 : 2021年8月18日
読了日 : 2021年8月18日
本棚登録日 : 2021年8月18日

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