ベニスに死す [DVD]

監督 : ルキノ・ビスコンティ 
出演 : ダーク・ボガード  ビョルン・アンドレセン  シルバーナ・マンガーノ  ロモロ・ヴァリ 
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感想 : 103
5

MORTE A VENEZIA
1971年 イタリア+フランス 131分
監督:ルキノ・ヴィスコンティ
原作:トーマス・マン『ヴェニスに死す』
出演:ダーク・ボガード/ビョルン・アンドレセン/シルヴァーナ・マンガーノ

静養のためヴェニスを訪れた老作曲家アッシェンバッハ(ダーク・ボガード)は、同じホテルに泊まる美しい上流階級の一家の少年タージオ(ビョルン・アンドレセン)の姿を一目見た瞬間から惹かれるようになる。しかしやがて一帯でコレラが蔓延し…。

マイブーム名作映画を見直すシリーズ。何度見ても美しい。映画全体もだけど、とにかくタージオの美しさは、アッシェンバッハ同様、どれだけ眺めても飽きることがない。白いセーラー服が一番可愛いけど、紺バージョンのセーラーも可愛いし、終盤大道芸人が歌ってる場面で着てる、金ボタンがいっぱいついた紺のジャケットも貴族っぽくて素敵。ボーダー水着も色違い二種類あるんだよね(タージオのファッションチェック)

さてアッシェンバッハ、回想シーンで妻子が出てくるので、けして同性愛者というわけではない。にも関わらず、タージオの圧倒的な美の前に打ちのめされてしまう。同じく回想シーンで、作曲家仲間のアルフレッドとの議論が度々挟み込まれるが、芸術家の創造なんて自然発生の美の前には何の役にも立たないみたいな理論を、タージオの存在は実証している。ちなみにアルフレッド自体はとても面倒くさい議論ふっかけ屋なので、出てくるとイライラする(苦笑)

このアルフレッドとアッシェンバッハが砂時計について話す場面が序盤にあるが、この砂時計がとても象徴的。最初のうちは全然砂が減ってないように見えるのに、気付いたらあっという間に砂は落ちてなくなってしまう、というようなことをアッシェンバッハが言うのだけれど、この砂=若さとも命とも置き換えることができ、ラストのアッシェンバッハはまさにそのような状態で、あっという間に破滅へと滑り落ちていってしまう。

中盤で一度アッシェンバッハは帰国しようとし、駅で瀕死のコレラ患者を見かける。この時帰国していればアッシェンバッハは死なずに済んだのに、しかし彼は手違いで荷物が違う場所に届いてしまったことに激怒し、ホテルに引き返す。このときのアッシェンバッハの嬉しそうな顔。本当はずっとホテルに残ってタージオを見つめていたかった彼は、帰らずに済む口実が出来たことが嬉しくてたまらなかったのだろう。

以降、コレラの蔓延に薄々気づきながらも、アッシェンバッハはタージオのストーキングを続ける。これは恋なのか、といえば、アッシェンバッハはけしてその成就を望んでいるわけけではなく、タージオに何か見返りを求めているとも思えない。ただただその美を堪能していたい、それだけであることに、個人的にとても共感する。もはやこれは推しアイドルとファン関係みたいなものだ(違)

とはいえ、最後にアッシェンバッハは、めかしこみ海辺に現れる。この滑稽さが悲哀を誘うが、もはやあれは最後の死化粧のようなものだろう。美しい推しの姿を見つめながら息絶える。ある意味理想の死に方なんじゃなかろうか。

余談ですが、タージオ母役のシルヴァーナ・マンガーノの着ているドレスも毎回とても素敵でうっとりでした。何そのドレープ!とくに帽子が素敵で、広い鍔の上に花とかヴェールとか盛り盛りに乗ってるの、重くて首めっちゃ疲れそうだけどとにかく豪奢で素敵でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  イタリア映画 他
感想投稿日 : 2021年8月20日
読了日 : 2021年8月20日
本棚登録日 : 2021年8月20日

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