ドローン・オブ・ウォー [DVD]

監督 : アンドリュー・ニコル 
出演 : イーサン・ホーク  ブルース・グリーンウッド  ゾーイ・クラヴィッツ  ジェイク・アベル 
  • ポニーキャニオン
3.20
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本棚登録 : 82
感想 : 20
3

GOOD KILL
2015年 アメリカ 102分
監督:アンドリュー・ニコル
出演:イーサン・ホーク/ブルース・グリーンウッド/ゾーイ・クラヴィッツ
https://web.archive.org/web/20160611072559/http://www.drone-of-war.com/

空軍の戦闘機パイロットだったトーマス・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は、今はラスベガス近郊の米軍基地で、無人戦闘機の操縦士に配置されている。ここではいくつものコンテナのような操縦室で、各チームがアフガニスタン上空の無人戦闘機からタリバンたちを掃討している。実際の戦闘機と違い、パイロットは安全、トミーも仕事が終われば車で自宅に帰り、妻モリー(ジャニュアリー・ジョーンズ)と子供たちに会える。しかし彼はこの仕事と生活に次第に鬱屈を抱え始め…。

9.11以降の、アメリカ軍のありかたが問われている。ゲームのように、安全な場所から操作するだけで敵を撃破してしまえる装置。本来なら、そのほうが兵士は肉体的のみならず精神的にも安全そうなものだけれど、実際には実戦に出ている人間以上に病んでしまう人間が多いという。実感なく人を殺せてしまう異常事態に、まだまだ人間はきちんと傷つくことができるのだ。

トミーの所属するチームは、上官ジョンズ中佐(ブルース・グリーンウッド)も理解があり、トミーを気遣ってくれるが、上(政府、そしてCIA)には絶対服従、自分でスイッチを押さない人間は平気で殺戮を要求してくるが、現場の人間は機械ではない以上、そのことに葛藤し当然ストレスがかかる。民間人を巻き込まないよう配慮されつつも、実際にどうしても、という場合はやむを得ない犠牲を要求され、逆にレイプ犯をカメラが捉えても、それは米軍の標的ではない、という理由で放置するしかない。

映画の原題は「GOOD KILL」トミーたち軍人が作戦を完遂した(つまり敵を殺し終えた)ときに言う言葉で、字幕では「掃討完了」となっていたが、「GOOD KILL(良い殺し)」とは…なんとも嫌な言葉だ。これをタイトルにした皮肉を思えば、当時のドローンブームに乗っかった邦題はちょっとマヌケすぎる。

戦争とはいえ人を殺すことに抵抗のない人間は少ないだろうが、そこでなんというか一種の「命のかけひき」、自分自身の身も危険に晒し、殺すか殺されるか、という対等な立場であることで、戦場ではその殺人を正当化する心理が働くのではないかと思う。殺さなければ殺される、という切羽詰まった状況であれば、それは殺戮ではなく正当防衛みたいなものだ。まやかしかもしれないけど、そこが実戦と、この映画で描かれているドローンを使った一方的な殺戮が兵士たちにかける心理的負担の違いだろう。ボタンを押すだけで相手は死ぬ。なんかこう、フェアじゃない、という感じ。しかもそのボタンを押すことを決めるのは、自分自身ではなく、どこかにいるエライ人。

トミーはどんどんやさぐれていく。正義感の強い新入りの女性兵士スアレス(ゾーイ・クラヴィッツ)は、上のやり方に批判的で上官とぶつかり、トミーも内心彼女に共感しているが、どうすることもできない。鬱屈を抱えた彼は家庭内でもそれを隠せず、妻は子供たちをつれて出て行ってしまう。追い込まれたトミーが、ついにとった行動は…。

ネタバレだけど、レイプ犯をトミーが撃ち殺す場面は、ちょっとスカっとすると同時に、それで「ようやく正しいことをした」と満足するトミーの心理にちょっとしたモヤモヤも感じてしまう。確かに「あんなやつ殺しちゃえ!」と思いながら私自身も見ていたが、それで本当に神のように手を下すとしたら、それはそれでなんか怖いな、というか。とはいえ、映画は、戦争について斬新な切り口の良作でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  アメリカ映画 他
感想投稿日 : 2020年11月20日
読了日 : 2020年11月18日
本棚登録日 : 2020年11月20日

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