2016年 日本 108分
監督:真利子哲也
音楽:向井秀徳
出演:柳楽優弥/菅田将暉/小松菜奈/村上虹郎/池松壮亮/北村匠海/三浦誠己
http://distraction-babies.com/
うーん、こういう映画って、どう評価していいか難しいですね。最初から最後まで人殴って殺してるだけの暴力映画を「若者の破壊衝動を見事に捉えた快作」とかは、もうおばちゃん思えないわ。自分より強そうなヤクザに喧嘩売るならまだしも、通りすがりの善良な人たち無関係にボコボコ。年をとるとどうも「そういう衝動あるよね!」という若者側の気持ちより「道歩いてるだけで謂れのない暴力を受け人生台無しにされた側の人の気持ち」を考えてしまってダメだった。もしあんなヤツに家族や大切な人を殴り殺されたら、どれだけ復讐しても足りない。殺された人たちにもそれぞれの人生があり人格があり、誰かのストレス発散の道具にされていい人生なんてないのにって思っちゃう。
同種の殺戮ロードムービーでも「ナチュラル・ボーン・キラーズ」や「トゥルー・ロマンス」を観てそんな風に思ったことはなかったし(若かったからだろうか)、タイトルの語感似てるから思い出したけど村上龍の「コインロッカー・ベイビーズ」は今でも名作だと思う。類似しているのにこの作品の暴力は受け入れがたいというのは、たぶん何かしら致命的な欠如があるんだと思うんだよなあ。ひとつは明らかに、主人公があのような人間になってしまった理由が説明されていないことだけど。
ロケーションは良かった。愛媛県松山市。海があって港と船があって、大きな川(湾)があちらとこちらを隔てている感じ。向井秀徳の音楽もかっこいい。ナンバガ時代にも「害虫」の音楽担当してたと思うけど、10代のヒリヒリした感じ、音で表現させたらピカイチですね。
あと出演者たちは若手俳優がみんな狂気の熱演で大変良かったです。柳楽優弥の得体のしれないモンスターっぷりはもとより、菅田将暉のクズっぷりが凄い(※褒めてます)主人公は見境なく人を殴っているようで、実は女性や老人、子供には手を出さないし、レイプの類いもしない。しかし彼を盾にして自ら「猛獣使い」などと嘯いている菅田将暉の役のほうは、いかにも自分より弱そうな女性しか殴らず、まさに虎の威を借る狐。
二人が車を奪って逃走し、拉致されたキャバ嬢の小松菜奈を連れてのロードムービー風になってからは、いくらか彼らの心理と関係性の変化を面白く観れた。とくに小松菜奈の逆ギレっぷりが凄い。彼女は彼女でかなり嫌な女として登場したわけですが、この逆襲だけは唯一「痛快」と感じてしまった。人間単純なもので、殺される側が明白に「悪」であれば、暴力にも快哉をあげてしまうわけで、そういう意味ではまだまだ自分もクズなのかなあ。あと、殴り合ってる当事者よりも、それを逃げるでもなく助けるでもなく警察呼ぶでもなく、スマホかざして眺めてる群衆というのがとても気持ち悪かったです。
弟役の村上虹郎は可愛かった。夏ドラマでヤンキー高校生役やってたけど(同じく友達役の北村匠海も)この映画では中学生にしか見えない幼さで、いつ撮影したんだろう?と不思議になるほど。よその子とゴーヤは成長が早い(笑)
- 感想投稿日 : 2016年10月4日
- 読了日 : 2016年10月3日
- 本棚登録日 : 2016年10月4日
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