君の望む死に方 (祥伝社文庫)

著者 :
  • 祥伝社 (2011年9月1日発売)
3.43
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本棚登録 : 809
感想 : 87
4

わたし、この女(優佳)嫌いだわ。
いきなり何を書くんだって感じですかそうですか済みません。でも読み進めるにつれ、どんどん嫌いになっていったから仕方ない。嫌いというか、怖いから嫌だ、に近い。話自体は面白くて好きだけど、ちらちらと優佳の顔が脳裏に思い浮かぶたびにイヤーな感じになっちゃうんだよお。
ひとまずあらすじ。

発電システム等の世界的メーカ、ソル電気の創業者、日向貞則は癌で余命幾何と宣告され、どうせ死ぬなら、と今は亡き同志の息子、梶間晴征に殺される道を選んだ。梶間には彼を殺す理由があり、日向は死にたがっている。果たしでとうやって相手に気付かれずに、また会社に傷をつかせないよう完璧な殺人を遂行させるか――。日向がとった行動とは――?
そして舞台に選んだ保養所での研修で、ゲストとして招待した三人のサクラの一人、碓氷優佳がゆるりと歯車を狂わせる。

初、石持さん。面白くてドンドン読んでいこうと心に決めた。
まず結果ありき、の話で、何にも情報がない――日向に残された日が少ないことも解らない状態で、殺人が起きたことが告げられる。ああ、これはその殺人事件を解決させる話なんだ、という先入観一が生まれ、続く本章に入ると、事件が起きるまでが紹介される。そこで日向が死んだのか、でもその日向は殺されたがっている。――ん、どういうこと? と疑問に思ったが最後、一気に読んでしまった。
正直、日向が殺されたいと思ってる理由が納得できないし(ネタバレになるため書かないよ)、ただがんで死ぬのが怖いのを取り繕ってる風に聴こえてしまったのは果たしてわたしだけ? でもね、そんな共感云々は抜きにしても、日向の人間性は会社を一流と呼ばれるまでに押し上げた人独特の魅力と風格がある。でも梶間が所詮駒だと思うと馬鹿らしいんだ、すべてが。魅力と風格が幻だったの、と思ってしまう。
でも面白い。
研修の内容もなかなか興味深いし(実際そんなことが行われていたらぞっとするけど)、呼ばれた社員四人の気負い方、反応も楽しい。なかなか自由な時間が取れないと内心焦る梶間もその理由が色恋沙汰となると、滑稽じゃない。
でもね、全てが優佳の手中にあって彼女がコントロールしていると思うと、ぞっとする。日向の「自殺」を阻止しようとしているのは早々に見当がついて、日向が邪魔されたことを気付くたびに梶間に感じた滑稽味と似た思いを抱いてたのしくなる。でもさ、それ以外のモロモロも時にはしつこいくらいにえぐり込まれると、怖い。重罪を防ぐために、彼女は小さな犠牲を気にしない人間なんだろう。ぞっとする、というような感想を日向が抱いた意味が読んでいて解るのだ。
事件を解決していく、というものではなくて、優佳の結論に至るまでの思考が語られる。もちろん日向の意図は彼からの視点で語られている個所に述べられているから、答え合わせも出来るのだ。
鎌をかけたりハッタリを飛ばす、といった展開は好きだけれど、「完璧」な彼女だからこそ、一貫して論理を選んでほしかった。
そしてラスト――からのループ。
果たして結果は――? 
何気に作者からの挑戦状が叩きつけられているっ! 終わり方、個人的には超好み!

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 石持浅海
感想投稿日 : 2012年12月14日
読了日 : 2012年12月12日
本棚登録日 : 2012年12月12日

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