エスノグラフィーという社会学の手法を使ってソフトウェア開発におけるデスマーチが発生する理由に迫る。今の私が隣接業界で働いていること、かつての私が人類学という隣接学問を学んでいたことから興味深く読んだ。
著者の結論は、開発者が自身を職人だと位置づけており、そのプライドが誰にも頼らず腕一本で完成させることをヨシとしているから、というもの。
デスマーチのなくならない理由は決してそれだけではないにせよ、今まで誰も書いてこなかった側面に光をあてて説得力のあるライフヒストリーを描き出してみせたことには賛辞を送りたい。
ただし、著者の主張は10年前であれば非常に納得のいくものだったが、本書の出版さらた2016年においてはソフトウェア開発は個人ではなくチームで行うことが前提であり、また、プログラマーではなくコーダーと呼ばれるポジションの人が「システムの全体像も見えないまま部品を作る」ような細分化された役割分担で作る大規模システムでもデスマーチは多発していて、そこでは本書のロジックでは説明のできない現象が起きている。ぜひ、こちらにも筆を向けていただきたい。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2016年12月9日
- 読了日 : 2016年12月6日
- 本棚登録日 : 2016年12月6日
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