映画監督北野武の一つの到達点かな。
すごいよなー抗争の最中に隠れ家暮らしぶっ込んじゃうんだもん。
序盤、淡々と描かれるヤクザとしての日常。シマにある雀荘の店主を無慈悲に、というか無関心に殺してしまう。もはや村川にとって、死は大した問題ではないかのようだ。
突如切り出される沖縄行きや沖縄で裏切りを知った時も、子分や組の心配はするも決して自分の死への恐れを見せない。それは、ヤクザである以上、常に死と触れ合ってきたからであるし、村川の覚悟のようなものゆえだろう。
しかし、どうだ。
抗争(というか追っ手?)から逃れて隠れ家で生活するも、なんにもやることがなく、暇を持て余したヤクザたちは戯れに時を過ごす。その時、子分とロシアンルーレットで遊んだ村川は、晩に自分で頭を打ち抜く夢を見る。今まで簡単に人を殺してきた人間が、久々に感じた死への恐れだったのではないか。
そして同時に、それは生への関心を呼び覚ますことでもあった。その後、村川は、誰よりも「遊び」を楽しみ始める。自分に関心を寄せる女も出来る。しかし、それが繰り広げられるのは、いつ終焉が来てもおかしくない隠れ家での安息の時間。それは他でもない人生そのものに通じる気もする。
結局、村川は裏切った相手に復讐を行い、生き延びるも彼を待つ人たちの思いとは裏腹に自ら死を選ぶ。
やくざ映画でこんな展開の映画作ろうなんてあんまり考えないでしょう、普通。しかも、映画の大部分は隠れ家での逃亡生活だし。
それに有名な村川の台詞がいい。
「やくざ辞めたくなったなー」や「あんまり死ぬの怖がるとな、死にたくなっちゃうんだよ」とか。
これは、いろいろな解釈ができると思うけど、私は上に書いたような村川の変化があったと思う。
他にも赤と青だとかロケ地としての沖縄だとかエレベーターでの銃撃だとかいろいろ言及したいものはあるけど、この辺で。
一見無意味なシーンが多いけど、無駄がないと思える脚本や、映画としてはっきり確立されたものを感じる映像の素晴らしさだけでも再鑑賞したいと思える傑作。
- 感想投稿日 : 2012年8月3日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2012年7月28日
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