いいエリート、わるいエリート (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社 (2015年7月17日発売)
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東大法学部主席卒業、国家公務員Ⅰ種に学生時代に合格、財務省キャリア、司法試験合格、ハーバード大学留学という素晴らしいキャリアを持った、女性が書かれた本です。

なかなか外観も良いので、同じ内容を「男」が書いたら本にならなかったかもしれませんが、お世話になっている図書館で目についたので読んでみました。

彼女が実際に体験した、東大や財務省の実情はどうなっているのかが綴れていて、自分ではけして体験することができない世界の最新情報に触れることができた点では、貴重な読書だったと思います。あんな状態をいまだに続けている財務省を始めとした各省庁に、今後とも優秀な人材が集まるのか、心配してしまいました。あれが事実としたら、30年は遅れていることになりますからね。

本の中で、彼女が再三強調しているように、彼女の実績は、努力の賜物であり、その努力とは、それを得るのに費やした時間量であると述べています。効率よく勉強をする、とか、短時間で結果の出る方法でやろう、という本に書いてある内容は、それを真似ても効果の出ないことが多いというのが私の経験でもあります。

彼女は、司法試験の直前は一日17時間以上勉強したそうです。一定以上の結果を出すには、最低限の時間を投資しなければ難しいというのは、どの世界でも同じだと思っていた私は納得のいく内容でした。

以下は気になったポイントです。

・勉強は、頑張ればそれに見合うリターンが期待できる。それぞれの努力に応じた評価が得られて職業の選択も増える。年齢を重ねるごとに、成果が上がる。人生の後半を充実させる職種を自分の意思で選択できる(p19)

・東大医学部を目指していた場合、東大に入れなくても、他の国立大学の医学部・私立の医学部も選択できる。東大医学部卒でも、ほかの医学部を出ても、医師は医師である(p19)

・7回読みとは、助走読み3回(漢字・カタカナ中心)、本走読み2回(キーワード理解、要旨を把握)、完走読み(脳に定着)(p21)

・自分にあった勉強法は、変えてはいけない(p24)

・信念とは、最初は漠然としていても、徐々に輪郭がはっきりしてくるもの。理想から始まり、少しずつ中身も伴ってくる(p50)

・詰め込み教育があったからこそ、努力が報われるシステムができあがり、みんなが勉強したとも考えられる(p61)

・学習塾とは、成績の悪い、その他大勢が、成績のイイ子たちに搾取されるシステムとなっている(p70)

・東大の卒業生は、二十代前半までずっと勝ち続けている、だから評価されなかった時、自分を立て直す術を持っていない。立て直す必要のないキャリアを歩んできたので(p81)

・女性から見た「理想の男性」に変化がないならば、男性の側の「理想の女性」に変化がなくても男性だけに文句を言うことができない(p84)

・高圧的でも部下は耐える理由として、部下のせいで、自分が上から怒られても、絶対に部下のせいにしない。上司のところで止めてくれる(p120)

・人には必ず「波に乗れない時期」がある、その波に乗れていない時にどこまで我慢できるか、どう振舞うか、が人生を分ける(p136)

・弁護士や医師が、顧客や患者との間で結ぶ契約は、売買契約ではなく、委任契約である。これは特殊な契約で、受任するほうは、委任する方と比べて、圧倒的な知識があることが前提になっている。だから、受任する方には幅広い最良が認められる。無報酬が原則で、簡単に終わらせられる。(p151)

・世の中には2つのタイプがいる、1つめは、投資によってリターンを得る人、もう1つは、労働によって対価を得る人。前者は金融所得、校舎は勤労所得。前者の場合には、投資がゼロになることもある反面、何倍にもなる可能性がある。後者は時間に限界がある(p163)

・ファーストキャリアに弁護士を選ぶか否かはとても重要である、そうでない限り、「根っからの弁護士」になれない(p165)

・負けた時のふるまいに人の本質が表れる(p180)

・マイナスのエネルギーを、自分自身を前に進める力に変えることができた(p182)

2016年1月24日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会・生活・労働
感想投稿日 : 2016年1月24日
読了日 : 2016年1月24日
本棚登録日 : 2016年1月21日

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