17歳のための世界と日本の見方―セイゴオ先生の人間文化講義

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  • 春秋社 (2006年12月25日発売)
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歴史に関する本はよく読むのですが、この本の特徴は、歴史を文化や宗教という切り口で解説してある点です。

宗教というものは、人間(特に支配階級)のソフト分野の発明品だと思いますが、それが歴史においてどのような役割を果たしてきたかについて、考えさせられる良い機会を与えてもらったと思います。

歴史は切り口を変えると、面白い発見があるので、今後ともこのような本の読み方をして楽しみたいと思いました。

以下は気になったポイントです。

・2つの大事なポイントとして、世界と日本を歴史観を持ってみること、もうひとつは、社会と文化はどのように成立しているかをよく知ること、である。この両方を学ぶことを「人間文化を学ぶ」という(p5)

・日本でも香りを非常に気にしていた時代があった、平安貴族がそうで、あまり風呂に入れなかった時代、香水をつけるのではなく、「お香」焚き染めて、その香りを着物や扇に移らせていた(p24)えん

・地球の半分以上がドロドロだったころに、宇宙からウィルスのような情報体がやってきて、その情報が海辺の粘土質のようなものに転写されることで、最初の生命が誕生したとされる(p38)

・親指を使ってモノをつかんだり持ったりすることができたところから、人間の文化がスタートした(p41)

・二足歩行を始めたことで、目の位置が変わって世の中を平衡に見ることができるようになったのは大事件であった、目が正面に並んで完全に顔の正面になった、それによって目の焦点を結ぶことができるようになった(p42)

・二足歩行になったおかげで、妊娠期間が異例の長期間になった、さらに赤ちゃんが未熟児になってしまった(p46)

・人間には3つの脳がある、ワニの脳(反射脳)、ネズミの脳(情報脳)、人の脳(理性脳)がある(p52)

・人間文化史の最初に出てきたものが宗教、そのあとに舞踊や哲学、建築が生まれて、その後に文藝がでてくる、理性の脳がいかに本能の脳の暴走を抑えるかという闘いがあったから(p54)

・ヒーロー、ヒロイン物語には、1)セパレーション(出発)、2)イニシエーション(冒険)、3)リターン(帰還)がある(p73)

・東洋では西洋とは異なった考え方が生まれた、それを行った代表的な人は、マハーヴィーラ(ジャイナ教)とブッダ(仏教)で、紀元前6世紀のインドに生まれた(p92)

・ブッダの教えは、個人で守らなければならない「戒」と、集団で守る「律」を決めていった(p103)

・孔子の考えを基に、儒教が生まれた、四徳(仁義礼智)を重んじることが決められ、漢の時代に発展して「信」が加わって「五常」になった(p109)

・荀子の性悪説は教育論に、孔子や孟子の性善説は、帝王学となった(p111)

・インドや中国、日本は森林が多いので、砂漠のような光と闇や、生死に迫られるといった二者択一ではなかった、森林には前後左右、東西南北と、いろいろな方面に様々な情報が待ち構えていた(p120)

・本当に何かをやりたければ5年間という期間は非常に大きい、ファミコン、ケータイ電話が広まったのも5年間かからなかった(p141)

・ユダヤ教の神聖なる教義や思想をつくったのはハスモン家であるが、これが、エッセネ・サドカイ・パリサイ派に分かれた、エッセネ派からイエスキリストが登場してくる(p147)

・キリスト教は、ユダヤ教のエッセネ派やその小集団であったクムラン宗団が編集しつつあった信仰を再編集して、一気に成立していったもの、その編集者がパウロ(p154)

・ローマ帝国が国の宗教として正式に認めていたのは、太陽神ミトラスを信仰する「ミトラス教」であった(p159)

・アリウス派は、父なる神とイエスキリストは本質的には異なる、子なるイ
エスはあくまで神によって作られた人間性を本性として持つという「人間イエス派」、アタナシウス派は、イエスは神と人間の両方の性質をもつという「神人イエス派」、ニカイア公会議ではアタナシウス派が勝ったが、その後250年も続いた(p165)

・イスラム教は7世紀の初めにマホメットにつくられたが、世界で初めて最初から文字を持った宗教(p181)

・イスラム軍がピレネー山脈を越えて、欧州に侵入しようとしたときに、フランク王国のカール将軍が、イスラム軍を撃退した、この「トゥール・ポアティエの戦い」は有名(p182)

・日本の編集方法にこそ、日本文化の重要な独創的な特質がひそんでい
る(p203)

・イザナギとイザナミが最初に産んだ子供がヒルコ(手も足もはっきりしない奇形児)であるというのは世界中の神話でも特異、さらにこのヒルコこそ大事にすべきと奉られる、それが恵比寿(p208)

・イザナギの左の目からアマテラス(天照大御神)、右の目からツクヨミ(月
読命)、鼻からスサノオ(須佐之男命)という三神が生まれた(p210)

・古事記は万葉仮名による日本語(倭語)、日本書紀は漢文、当時の日本には縄文以来の日本語(倭語)をそのまま文字として定着させるための統一した方法がなかった(p219)

・古事記は天皇家のルーツや王権の由来を明確にするため、日本書紀は
日本という正史を漢文という記述スタイルを使った(p220)

・天武天皇は、日本という国名を決めた天皇である(p224)

・朝廷とは、朝の時間帯に「まつりごと=政治上の会議や決裁」をやったことからきている言葉(p228)

・朝廷では漢字能力が必要であったが、内裏(朝廷に対して夜の世界を司る場所)では和歌の能力が求められた(p229)

・ルネサンスが起こした復興や再生は、キリスト教が封印してしまった古代ギリシア・ローマの知の復興であった(p290)

2013年1月14日作成

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本史・世界史
感想投稿日 : 2013年1月14日
読了日 : 2013年1月14日
本棚登録日 : 2013年1月14日

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