神は妄想である―宗教との決別

  • 早川書房 (2007年5月25日発売)
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感想 : 85
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図書館で借りて読み終わるまでに一ヶ月近くかかってしまった。内容は面白かった。
この前読んだ「聖書男」にもあったように、アメリカでは色々な宗教を色々な形で信じる人たちがいる。聖書の読み方や実践も原理主義者でさえも恣意的だ。本書の作者はそのことについて聖書をもとにした道徳の否定につなげている。
前半は、現在の生命のありようはすべてダーウィンの進化論ですべて説明がつき、神は必要ないと言っている。
その辺の論証も面白いが、作者が最もいいたいことは、宗教という名の下に行われる抑圧や人権侵害だろう。特に子供や弱い人への。彼からみたら神が存在する限り、そのようなことはおこり続けるのだろう。
私も前から思っていたのだが、子供に悪いことをすると地獄に落ちるとかいって脅かすのはどうかと思っていた。ささいな悪事をとりあげて神が人を地獄に落とすなんて、そんな神様ってちょっと、なんというか、ひどすぎるというか笑えるくらい心が狭い存在だと思っていた。人への寛容や愛を教義にしている神が、一方で、自分を信じない人は地獄に落ちるっていうなんてどうよって思っていた。だから、本書で「そんな神なんていないから!科学では神はいないから!地獄だってないから!」みたいなことを情熱を持って長文で述べる作者は、結構かっこいいし、既存の宗教よりもはるかに人を救う力があるのではないだろうか。
それに、神の存在を証明すべきは神がいるといっている側で、神を否定する側ではないよ、というのもその通りだと思う。そして、神を科学的に証明できた宗教はないのだ。だって、いないんだから。
現代日本人の大半は神はいない、関心を持っていないという人も多いけど、そうだろうか。日本にも多くの宗教があり、それを信じる人は大勢いる。
巻末に宗教によって苦しんでいる人のためのサポートのアドレスは、海外のサイトで、日本人には不要なので割愛した的なことが書いてあった。でも、この本を手に取る人には日本人だろうと海外のアドレスだろうと、必要なのではないだろうか。
学問や興味としてではなく、宗教や神に疑問を持ちながら、家族や環境のしがらみの中で苦しんでいる人がこの本を手にとるケースがあるのではないだろうか。そしてその人は海外のアドレスから世界中にいる同じ苦しみを持つ人とつながることができるのではないだろうか。
作者は、どこの国の人であれ、その人数が多かろうと少なかろうと、宗教や神というものに苦しんでいる人にこの本を届けたかったのだろう。日本でも、作者に感謝している人はいるだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 興味
感想投稿日 : 2013年5月25日
読了日 : 2013年5月25日
本棚登録日 : 2013年5月25日

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