五分後の世界 (幻冬舎文庫 む 1-1)

著者 :
  • 幻冬舎 (1997年4月1日発売)
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感想 : 552
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時空のずれ、そしてその世界は戦争を続ける日本、、という設定が面白そうだなと思った。今の日本と戦争を続けていたらの日本の対比がドラマチックに描かれてるという感じではないのだけど世界観に引き込まれる。
1ページの密度が濃くてちょっと目を離すとどこまで読んだかわからなくなって、子育ての合間に読むのは難しい。。

今の自分への、現代人への、強烈なメッセージを感じた。
戦争を終わらせないべきだとは決して思わないけれど、そのせいで日本人がアメリカの影響を大きく受け、真似をし、ただひたすら生きるという強い意志を失っているのは
たしかにそうだよなぁと。
人とのコミュニケーションや豊かな生活(とみせかけて人と比べてもやもやしたり)、みたいな人間関係における悩みやトラブルも、UGの人達のように無駄なことは喋らない、ただ必要なことのみ遂行する、そんなシンプルな姿勢でいたらいいのかも?なかなかそんな態度で現代を生き抜くのは難しいけれど。でもなんかシンプルに生きている人の方が複雑に考えて行動してる人より凛としてるように感じる。なんでだろ。何も考えずにただ生きてるのと生きるという強い意志を持ってただ生きるのって全然違う。。

感想というと難しいけれど、メモしておきたい箇所がいくつかあった。
他の本でもそうだけど村上龍の本ではぼんやり生きてる人への批判をすごく感じる。だから私は読みたくなるのかもしれない。読んだからといって生き方がハッキリしてきたわけではないのだけれど。。

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自分のことを自分で決めて自分でやろうとすると、よってたかって文句を言われる、みんなの共通の目的は金しかねえが、誰も何を買えばいいのか知らねえのさ、だからみんなが買うものを買う みんなが欲しがるものを欲しがる、 大人達がそうだから子供や若い連中は半分以上気が狂っちまってるんだよ、いつも吐き気がしてあたり前の世の中なのに、吐くな、自分の腹に戻せって言われるんだから、頭がおかしくなるのが普通なんだ


全部地下に埋められて、いくつかの地下工場もできたけど、そういうのはスラムができてからは放置された。だから今は幾つもの層に分かれた迷路になっている、ネズミだけじゃなくていろんなものが棲みついているが信じられないことに人間もいるんだ、(略)これはものすごいよ、人間とはいえないかも知れない、退化してるんだ、もちろん視覚は失われているし言葉を喋れない、ボクは一度見たことがある、(略)
退化というものがどういうものかわかるよ、進化するのに意志が必要かどうかなんてわからないし進化の価値も一口では言えないけど、退化はひどい、生きる意志を根こそぎ奪ってしまうような声だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年1月5日
読了日 : 2023年1月7日
本棚登録日 : 2022年12月29日

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