59点。新聞のコラムが好きだ。学生は受験対策として『天声人語』(朝日)を読むようにと僕らのころは言われていたが、数あるコラムの中で僕は『編集手帳』(読売)に軍配を上げる。
インターネットは便利なもので今では『春秋』(日経)や産経抄(産経)でも何でも読める。
その時々に関心を集めている話題から説き起こしながら、単なる時局解説に終わらず、必ず本質論にまで到達するのが優れたコラムというものだ。この前春秋で、AKB48の総選挙と霞ヶ関を結びつけて書いていたがそういう飲み会レベルの安易かつ薄っぺらい時論では到底本質論には至らない。
素晴らしいと感じるコラムと出会うのは稀で、大体はこじつけが過ぎるように感じたり、ぜんぜん議論が着地していないという印象を受けることもしばしばである。もちろん定量にまとめあげるセンスと、知識の広さには毎回感心する。
さて、本書は読売新聞の看板コラム「編集手帳」の6代目執筆者である竹内政明氏によるもの。彼のコラムの執筆を支えてきたのが、長年かけて古今東西の名文や名セリフを独自に収集してきた「竹内ノート」にあるといわれている。新聞記者はもともと雑学の大家と言われるが、竹内氏はまさにその言葉通り古今東西さまざまな書物の文章をコラムのテーマに合わせて的確に引用し、そこから新たな世界を展開する。本書はその応用でテレビドラマのセリフをきっかけに竹内氏が敷衍していくという内容だが、本書では彼の魅力がまったく見られない。博学であることはよくわかったのだが、それで??と肩透かしをくう。論が論たるには、単なる事実命題の提示やロジックの展開だけでは不十分なんだな。 やっぱ普通に、時論書いたほうがいいんじゃないでしょうか。
- 感想投稿日 : 2011年7月9日
- 読了日 : 2011年7月9日
- 本棚登録日 : 2011年5月31日
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