海の都の物語 ヴェネツィア共和国の一千年 1 (新潮文庫)

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  • 新潮社 (2009年5月28日発売)
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ローマ帝国末期、
蛮族の侵入によって1000年もの間続いたローマ帝国は、遂に崩壊の危機に瀕していた。

その時に、
海の上へ逃げた民族。
それが水の上の都と言われる
ヴェネツィアの人々だ。

海の上と言っても、
実際に海の上に逃げ込めるわけではないので、入り組んだ沼地の中に逃げ込んだのだった。

そこにしか道がなかった。
川を越えて山へ入ることも叶わず、近辺の街へ入ろうにも、今まさに蛮族が首都ローマを目指して、略奪のかぎりを尽くすその進路進行上に逃げることなどは不可能。

残された道は、その沼地にしかなかったのである。

そこから生まれた国の物語が、
ヴェネツィア人の物語なのである。


沼地の上では、
家を建てようにも、
通常の陸の上での建て方では、
建物は立たない。

ゆえに、
沼地の中の泥の更に下の層に、
びっしりと無数の尖った木を打ち込む。
その打ち込んだ木の上に、石柱を置き家の土台とする。

その木さえもその沼地にはないのであるから、これもまた外部から取り寄せるしかない。

つまり、
ヴェネツィアは完全なる非自給自足国家であったのだった。

そんな完全非自給自足国家に残された道。
それは、海運国家しかなかった。
海へ出ることである。

海へ出て、豊かになる方法は2つに1つ。
交易に従事するか、海賊を業とするか。

ヴェネツィアは前者を選び、
一千年もの間自由と独立を保ち続けたのであった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年4月22日
読了日 : 2020年3月14日
本棚登録日 : 2020年3月14日

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