「冤罪」と「復讐」いう重いテーマでした。
「冤罪」が発生するきっかけや、仕組みが刑事、検事、裁判官、弁護士、目撃者を通して描かれています。
強い正義感や責任感をもって希望した職業に着いた人達が、慣れや思い込み、メンツを気にして取り返しがつかないミスを発生させる怖さを感じました。
私達も仕事のミスの原因の大半は、きっとこうに違いないと言う「思い込み」であることを経験上知っています。だからこそ、組織としてのチェック機能、他者の意見が重要なのですが、そう言った機能がない、また言えない空気感が暴走させてしまったのではと感じました。
こうなってしまうと犯人にされた人には底知れぬ絶望感しかなく、江木や両親、姉弟、婚約者達に感情移入してしまうほど心理描写が詳細に描かれています。
特に子供を最後まで信じる母親の言葉には涙が溢れました。
ただ一つ、疑問に感じたことは、山名刑事も、この事件の関係者が次々に死亡しているのはきっと犯人は「江木に違いない」と証拠もなく「思い込み」で捜査を始めたことです。
これも一歩間違えれば、と思いながら読んでました。
「復讐」は許されるものではありませんが、「冤罪」と結びつけ、考えさせられる作品になっています。
おすすめしたい本の一冊です。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ミステリー
- 感想投稿日 : 2021年6月7日
- 読了日 : 2021年6月6日
- 本棚登録日 : 2021年6月7日
みんなの感想をみる