学問ノススメ. 学校では教えてくれない達人の知恵

制作 : JFN 
  • 徳間書店 (2012年4月26日発売)
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ラジオ版学問のすすめってラジオがめっちゃ好きで何回も同じやつ聴いたりしてたやつの書籍化を読んだ。半藤一利さんの本読んでみたいと思った。

今になってみれば、ちょっと気取っていてキザっぽい気はしますが、数学の魅力はわかって
もらえるのではないかと思います。真実は変わらない、真実でありつづける、かつ、永遠に残
る。たとえばシェフはおいしい料理をつくる。だけど、食べちゃうと忘れられてしまう。建築
家はりっぱな家を建てる。建築物を造る。でも、地震がきたら、なくなってしまうこともある。
ドストエフスキーもトルストイもすばらしい文学を書く。だけどその中の真理は何千年つづく
だろうか。
しかし、数学の定理という真実は、3000年たとうと5000年たとうと、「もうその定
古い」と言う人がいても、証明されたことは覆えされない。多数決で覆される
いけれど永遠につづく、ものすごい真実なんです。そこには美があります。数学の定理

あるとき、若い読者から「どうして勉強しなければいけないのですか」という質問を受けま
した。いくら三角関数や微分・積分を勉強しても、日常生活には役に立たないじゃないですか
というわけです。しかし実は、そこに学ぶということの一番大事な側面があると思うのです。
に私たちは数学や理科を学ばなくても生きていけます。ただ、学ばずに生
憶覚などの五感だけを頼りに世界を見ることになります。それは実は、世界をゆ
見ていることになるのです。私たちは視覚でものを見るときに、見たいものを見るだけですし、
しかもいろいろな方法で処理して見ているわけです。たとえば虹は7色といわれていますが、
本当は連続した色のスペクトルであって、民族によって虹が何色かはちがって見えているわけ
です。虹は本当は7色ではないということを学ばないと、私たちは本質をゆがめて見ているこ
とに気がつかないのです。

微分・積分ができたのは1600年代ですが、
も1600年の初めころで、顕微鏡ができて初めてミクロの世界を見ることができるようし
ったのも1600年代です。それと同じころに、世界は絶え間なく動いているので、その動き
を止めることができたら世界のすべてを記述できるのではないかと考えた人がいるのです。そ
こで考えだされたのが微分・積分という方法です。だから、微分・積分の公式などは本当はど
うでもよくて、微分・積分を学ぶことは、それがどのよう世界を記述しようとしているのか、
そういう形で世界を記述したいと思った当時の人々の思いや考え方を学ぶことなのです。
自分が持っている五感だけで世界を見るのは、小さなツボの中に入って、その壁に開けた5
つの穴から見ているようなものです。世界は本当に絶え間なく動いていて豊かなものなので、
学ぶことによっていろいろな見方を獲得しなければ、私たちは世界を豊かなものとして見るこ
とができないのです。それが学ぶことの本質だと思います。

歴史を自分なりに解釈していくと、歴史はとってもおもしろく見えてきます。歴史とは人間
を見ることであって、年号を覚えることではありません。日本人がこれまでどのような生き方
をしてきたのか、どんな考え方をしてきたのかということが歴史のなかから見えてくる。そう
すると、新しい日本人を発見することもあって、歴史がどんどんおもしろくなってくる。私た
ちのなかにはそういう人がいる、そういう生き方ができるんだということにもなっていきます
からね。

るべく案内人はいないほうがいいし、目的は持たないほうがいいと男
にかく僕は説教くさいことは一切言わないようにしていますが、ひとつだけ言うなら、「なる
べく目的を持つな」ということ。目的を持つと、そのこと以外はどうしても見なくなる。探す
本があって本屋へ行くとほかの本を見なくなるのと同じです。漫然と行くほうがいいんですよ。
たとえば「留学するならきちんと目的を持って行かないといけません」みたいなことをほかの
先生に言われても、「とりあえずそう言ってるだけだから、聞き流していい」と僕は学生に言
います。もちろん、これがやりたい、と本気で思えればいいんですよ。でも、本当にやりたい
こともないのに、目的だけ設定して自分を閉じてしまうより、自分を開いておいたほうがいい
と思うのです。屁理屈なんだけど、目的は実は手段に過ぎないというか、手段のほうが目的だ、
くらいに考えたほうが、いろいろな発見があるんじゃないかと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年6月5日
読了日 : 2023年6月5日
本棚登録日 : 2023年6月5日

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