圏外編集者

著者 :
  • 朝日出版社 (2015年12月5日発売)
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POPEYEとかBRUTUSの編集とか写真家やってる都築響一さんは『TOKYO STYLE』で知ってファンになって今回文章の本初めて読んだけど、面白かった。同業者と飲むぐらいなら全く関係ない職業の人と話をする方がよっぽど意味があるって言っててこれはほんとわかる。本とかもそういう意味で同業者の本は全く読まない。職場の同じチームの人とはコミュニケーションを円滑にする為に飲み会には参加するけどね。

けつきょく、編集を学ぶヒントがどこかにあるとしたら、それは好きな本を見つけてじっくり読み込むことしかないと思う。ミュージシャンが好きなミュージシャンをコピーすることから始まるように、画家が尊敬する画家の模写から始めるように、編集者だって好きな本や雑誌と出会って、それを真似して作ってみることから始めたらいい。著者が好きな本でもいいし、編集やデザインや、造本が好きというのだっていい。あとは、1冊でも多く自分で本を作ることのほうが大事だ。

それより大切なのは、100回読み返せる本を、何冊か持つこと。映画監督になるのだって、たぶんそう。寝る間も惜しんで何千本観た、とかいうのは評論家にとっては大切だろうけど、作り手はそうじゃない。100回見ても感動する、そういう映画と出会って、繰り返し観続けて、 自分のものにするほうがはるかに大切なはずだ。

編集塾と同じくらい無意味なのが、同業者との交流(笑)。異業種交流会は、さらに意味 ないと思うけど。 編集者の飲み会、みたいなのに誘われていたころもあったけど、ほとんど参加しないでい るうちに、もう誘われすらしない。編集者の知り合いはたくさんいるけれど、仕事を離れて も毎晩一緒に飲みたい、なんてひとはひとりもいないから。僕は写真も仕事だけど、写真家 もまったく同じ。同業者と酒飲んで「編集論」とか「写真論」を戦わすとかって、いちども やったことないかもしれない。 同業者は仲間じゃない。同じ仕事をしている以上は、ライバルだ。だから同業の友達は、 なるべく少ないほうがいい。編集者同士で酒を飲むヒマがあるのだったら、そこらへんの居 酒屋やスナックで、まるで関係ない仕事をしているひとと知り合うほうが、よっぽど有意義 な時間の過ごし方だろう。

音楽でたとえると、ミュージシャンにあたるのが著者で、DJの役割を果たすのが編集者しれない。DJの仕事が曲と曲をつないで、ひとつの音楽のかたまりを作るように、いろんな記事を組み合わせて、1冊の本に組み上げていく。素材を作るのはあくまでミュージシャンで、編集者は一緒に曲を作るわけではない。

美大の卒業資格には社会的な価値なんてないんだから、無駄だと思った瞬間に退学したほうがいい、ほんとに。 もし自分がロックバンドをやりたかったら、ギター買って練習するだけだ。音楽大学を目 指して、予備校行ったりしないだろう。ラッパーや小説家になりたかったら、ノート買って リリックや文章書くだけだろう、ひたすら。文学部国文科とか目指さない。でも、アートだけはちがう。それって、おかしくないか?

なにかが気になったとして、検索で簡単に見つかるものは、ようするにだれかがやってるってことだ。

コミケに行ったことのないひとは「オタクの祭りでしょ」くらいにしか思ってないかもし れないが、ぜんぶのブースが漫画やアニメなわけじゃない。文芸コーナーもあるし、詩集や 写真集や紀行文とか、いろんなジャンルがある。僕もずっと前から、手作り本でいちどは参 加したいとひそかに思っていて。外国からの出展者やお客さんも年々増加の一途で、「東京国際ブックフェア」よりはるかに国際的でもある。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年7月30日
読了日 : 2023年7月30日
本棚登録日 : 2023年7月30日

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