シートン―子どもに愛されたナチュラリスト (福音館の単行本)

著者 :
  • 福音館書店 (2002年7月20日発売)
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感想 : 5
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狼王ロボの話とか野生のムスタングの話とか人間に育てられたリスのお話とかちょっと考えただけでものすごくたくさんシートンのお話は思い出します。あ、ロイヤルアナロスタンもそうですね。自分が動物が好きだったし、姉がものすごくシートン動物記が好きだったこともあるのでしょうが、この本を読んでああ、そうか、そうだったのか~とちょっと思い当たることがありました。

児童書なのでとても丁寧に優しくシートンの一生が描かれています。少しコレは褒めすぎじゃあ無いかなあ?と思う点も多々ありますがそれでもシートンが動物が好きで、自然をいかに愛していたか、そしてそれだからこそあれだけの動物小説を書くことが出来たのだ、と言う件は頷くしかないと思うのです。シートンって最初は画家の道を目指してたんですね~ 挿絵のエッチングが又リアルでよいな~と思いました。

作者が冒頭でシートンは子供に嘘を付かないから子供に好かれた、と言うようなことを書いておられました。確かにシートンのお話を読むといかに人間が卑劣で残酷で、動物の方が気高く、雄雄しく、なんて人間って酷いのだろう、と辛くなったことが多々ありました。確かにただの児童書や子供向けの本であれば安易なハッピーエンドや子供向けの口当たりの良い、人間に都合の良いキャラクターに動物の姿を書き換えることも出来たはずです。だけれどもシートンはいかに人間が自然を破壊し、その場に住む先住民族・動物達を絶滅寸前にまで追いやったかをそうとは言わず、語っていたように思います。その嘘の無い真実さに子供は惹かれたのではないか?と言う件を読み、ああ、そうだったのかもなあ~と思いました。子供の方が嘘を見抜く力は強いと思います。

19世紀後半から20世紀初頭にかけてはある意味工業化を推し進めるよりももっと深刻な環境破壊が行われていたのですね。あの頃よりももっと環境問題は大変になっているわけですし、これからはもっと人間だって動物の一種なのだから、同じ地球に生きる生物として共存していかなくてはいけない心構えを持たないとなあ~と思うのです。

別に悲しい描写や酷い描写があるわけでもないのですがところどころ、無性に泣きそうになりました。この訳者の訳すシートン動物誌を読んでみたいなあ~と思いました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ノンフィクション
感想投稿日 : 2011年8月5日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年8月5日

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