人を殺したら苦しまなきゃいけないの?
心とからだと、どっちを殺したほうが悪いの?
主人公である吉永の中学生の息子、翼が同級生の殺人容疑で逮捕される。事件について翼は何も語ろうとしない。犯罪加害者の家族として、マスコミに追い回され、仕事場での立場も人間関係も失い、何をするべきなのか、何ができるのか。
少年院を出てしばらくして、被害者の父親に会いに行こうと吉永は言う。被害者の父親から、いつか更生した姿を見せてほしいと言われていたからだ。翼は言う。「ぼくは、更生したの?」更生とは、どんな状態を言うのか。少年院のロールレタリングにも、謝罪の気持ちは書かれていない。そして吉永は、「今の翼は心から笑っているように思えない。きちんと謝罪の思いを伝えることで、初めて笑うことが許されるような気がする。」と考えている。翼も吉永も、この時点では、加害者の立場にされてしまったという被害者意識の方が勝っているように思わされる。
事件のことを打ち明けてからのユキオや周囲の人たちの態度と、吉永が出した「心とからだとどちらを殺した方が悪いか」への答えと、何があっても子どもを受け入れようとする覚悟が、最後の場面につながったのだろうと思った。
翼が受けたいじめの中で、どう命令されて、どんな仕打ちをされようともペロの命は奪ってほしくなかった。翼のことを信頼しきっているペロの瞳を思い浮かべて悲しくなった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
小説 日本
- 感想投稿日 : 2023年5月18日
- 読了日 : 2023年5月18日
- 本棚登録日 : 2023年5月18日
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