全体を通して読むとブッダという人物と仏法がかなりわかる本だと思います。
ブッダは悟りを開いた後、どのように比丘や庶民への説法は非常に巧みな会話で説いていきます。十二縁起、八正道、四念処、戒律、三宝、瞑想、慈悲、中道、不生不滅、空、無相、無願、サティ(気付き)など、苦や迷いから脱することができるのか、正しい道とはなにか、幸福とはなにか、すべて論理的に説明していきます。
後半、ブッダの弟子たちでも理解ができずブッダに詳しく問いただす場面もいくつか出てきます。そのような場面は読んでいる身からしてもリアリティがあり面白かったです。
個人的には〈空〉〈不生不滅〉の解説がかなり詳細に書かれていて良かったです。まだ完全に理解はできてませんが・・・とはいえ、最終的には頭で理解しても悟れないんですけどね。
疑問がつきまとっていたのはあくまでこの本が〈小説〉だということです。経典がベースとはいえ、どこまで真実か、どこまでフィクションかはわかりかね、これは脚色してるんじゃないか?という場面もあります。
しかし、小説仕立てならではで、その時その時の環境でどのように話されたのかがわかったり、時にはブッダが語りかけているように思えたり感じたりすることができます。
ブッダの涅槃のシーンは詳細に描かれていて、弟子たちが別れを惜しむ心やブッダの残される弟子たちへの思いが強く伝わり、長い旅が終わる感覚がありました。
一方でこの時代の民族問題や戦争、階級社会については少ないのと(このあたりは手塚治虫のブッダのほうが多く描かれている)、長編なのは良いとして、次から次から出てくるエピソードは同じような流れが続き、単調な感じがして一冊の本としては途中間延びしている気もします。
長編なので一気に読むのは大変かもしれませんが、章が細かく分かれているので毎日少しずつ気長に読んでいくのも良いのではないでしょうか。
この本は評価が難しく評価無しとしました。
- 感想投稿日 : 2020年1月26日
- 本棚登録日 : 2020年1月26日
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