高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)

  • 早川書房 (1984年7月31日発売)
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本棚登録 : 2987
感想 : 201
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◯読み終えて素直に思ったことは、この小説に関して自分がどう考えて良いのかよく分からない、ということだった。
◯SF小説を読み慣れていないせいなのかもしれないが、解説まで読んでみても、表面的にしかこの小説を説明していない。訳者あとがきであるから当たり前ではあるが。ある種自由に読めると言えば読める。

◯日本とドイツが大戦で勝利するという設定は面白いが、おそらくこの類の小説では使い古されたテーマかと思う。
◯すると、この小説で他と類を見ない特徴は、易経による未知な力で展開することではないか。その点、SFというよりはファンタジーの印象。また、偽物の工芸品から違う世界、おそらくは小説の中の小説、比較的我々の現実に近い世界に迷い込むあたりも、まさしくファンタジーである。
◯しかし、小説世界での我々に近い小説を描いた人物は、その世界を、易経を使用しておらず、それはこの小説を易経を用いて描いたディックとは一線を画す。鏡描写のような非対称的世界には、フィクションであると確信するとともに、リアルに近い実感もあるのだ。
◯我々の世界の違う形をリアルに描いているが、さながら太古の時代のように易経により行く末が決まっていく世界観、リアルとファンタジーをバランス良く溶け込ませて、自分と小説の世界が入り乱れて感じるところは面白いと感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年3月20日
読了日 : 2020年3月20日
本棚登録日 : 2020年3月17日

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