北欧は、ヨーロッパで最後に訪れるべき場所だという。これといって見るべきものがなく、それでいてやたらと物価が高いからだ。私も、バルト三国に行く途中にフィンランドに立ち寄ったことがあるが、正直、あまり興味が湧かなかった。でも、もし前もってこの本を読んでいたとすれば、その印象は全く違ったものになっていただろう。
芸大の学生だった筆者は、フィンランドの美術史についての卒論を書くために、単身渡芬(トフン)する。1970年代末、今から30年以上も昔の物語。現在に比べれば、ヨーロッパは遥かに遠く、外国の情報も限られていた。当時、日本語で読めるフィンランド語の学習書は1冊しかなかった。
筆者は、言語学を専攻していたわけでもないのに、ヘルシンキ大学のフィンランド語科に入学する。右も左も分からないような状態で飛び込んでいって、苦労しながらフィンランド語の方言や古文までもを学んでいく。フィンランド語があまりにも難しくて、ぽたぽたと大粒の涙をこぼしたこともあったが、最後は・・・。あまり書くとネタバレになるので、この辺でやめておこう。
日本についての記述がたまに出てくるのだが、その部分はさすがに時代を感じさせる。けれども、この本は時代を超えた普遍性をもっている。ひたむきに努力を重ねる姿の清々しさは、今も昔も変わらないからだ。そして、この本を読めば、きっとフィンランドのことをもっと知りたくなるだろう。タイトルも秀逸である。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年1月13日
- 読了日 : 2011年12月8日
- 本棚登録日 : 2012年1月13日
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