今昔物語集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典 (角川ソフィア文庫 97 ビギナーズ・クラシックス)
- KADOKAWA (2002年3月23日発売)
芥川王朝物を読んだら元ネタが気になって気になって…
オマケに今昔物語に対する芥川の絶賛の仕方が素敵なのだ
〜芸術的生命、野生の美しさ、原色…〜
一番の魅力は素直な人間臭さ
そしてユーモア
計算高いイヤらしさはないのに、何か数学的な美しさも感じる不思議な作品たち
アラビアンナイトを彷彿させるお話もある
こんな時代にもしかして大海原を越え、大河を渡り、山脈も砂漠も横切ったり…なーんてことあるのかなぁ?
今昔物語は12世紀初め(平安時代末期)頃成立したといわれる
天竺(インド)、震旦(中国)、本朝(日本)の三部で構成される
各部では先ず因果応報譚などの仏教説話が紹介され、そのあとに諸々の物話が続く体裁をとっている
ちなみに第一番目の話は
仏教の開祖シャカの誕生から幕を開ける
シャカがブッダとなるための修行を積む目的で人間界へ転生する
シャカの選んだマヤ夫人のお腹に宿り、右脇の下から誕生(笑)
さてここからは芥川作品と比較して楽しみたい
■長大な鼻をゆでては脂抜きをする高僧の食事風景
○芥川作品 鼻
今昔物語のがユーモアがある
鼻の長い僧侶の食事のために鼻を持ってお手伝いしていた小坊主が鼻を皿に落としてしまう
「わしだからよいものの、えらいお方だったらただでらすまないぞ!」と、この僧叱られてしまう小坊主の捨て台詞が良い
「そんな鼻が他にあってたまるかい」
■色香と鞭で若い男を調教する、盗賊団の美人首領
○芥川作品 偸盗
それぞれ内容は違うけど、いやーどっちも好きだなぁ
今昔物語では
ある女が男に優雅な生活で満足させ惚れさせた後
男装した女が鞭で男を80回打つ(ひぇ〜)
気分はどうかと聞けば顔色も変えず「大したことはない」と答える男
なかなかやるじゃないか!
豪華な食事と甘い生活
そうこの女盗賊団のボスなのだ
とうとう彼女の指示に従い男は窃盗で活躍するように…
最後は何もなかったように女が忽然と消えてしまうところもなんだか粋
フランス映画みたいにシャレている
■死体の捨て場所だった羅生門のある夜のできごと
○芥川作品 羅生門
今昔物語はあっさり淡々としている
盗人の心理描写やセリフもない
芥川作品のが面白いなぁ
盗人の心理描写の変化が手に取るようにわかったからなぁ
■名刀と交換した弓矢でおどされ、妻を犯された夫
○芥川作品 藪の中
今昔物語は本当にタイトル通りの内容
しかも妻を犯した若い男より、弓矢を渡し、隙だらけの不甲斐ない夫が妻にコキおろされる
時代の違いを感じる
個人的に「藪の中」がかなり好きな作品なので、芥川作品に軍配があがる
ミステリー仕立てで真実に迫っていく展開がサイコーに面白かったのだ
■天下の色事師を焦がれ死にさせた氷のような美女
○芥川作品 好色
落とせない女など居ない!と自信満々のモテ男が、一枚も二枚も上手の美女にやり込められ、とうとう女性の便器の中身を確認する話し
芥川作品では喜劇と悲劇の絶妙な際どいところを攻める展開が読ませる!と膝でも叩きたくなる感じだったなぁ
と、まぁそりゃ元ネタに後出しジャンケンするみたいなものだから芥川作品のが面白いのはある程度仕方ないのかも
しかしタイトルを読むだけで面白いのが今昔物語
しかも1000以上の説話集…!
そして気高く力強く生きる女性像が多いことに驚く
カッコいい女性が沢山登場します!
- 感想投稿日 : 2022年5月29日
- 読了日 : 2022年5月25日
- 本棚登録日 : 2022年3月26日
みんなの感想をみる