お恥ずかしながらノーベル文学賞受賞で初めて知ったイシグロ氏
かつみなさまのレビューを読んで、これは間違いなく好きそうだと思い、読むことに
スティーブンスは英国の執事
有能で全身全霊を込めて職業を全うしている
長年仕えた雇主のダーリントン卿に対する敬慕は日本人のサムライ魂みたいなものを感じる
真面目で堅物で慎重で融通の効かない不器用さがなんとももどかしいことが多いのだが、なんとも愛おしい
戦後、ダーリントン卿は亡くなりお屋敷ごとスティーブンスはアメリカ人ファラディに売られる(時代を物語っている)
このファラディの親切な提案で短い旅行に行くことになり、スティーブンスは過去の思い出を馳せる
小旅行と思い出の物語は見事な構成で進行する
品格ある執事を突き詰めようと仕事に邁進するスティーブンス
執事の鏡ともいえる尊敬する父の悲しい衰え
同僚のミス・ケントンとの関係
二つの大戦に絡む、複雑で重要な外交会議、そしてダーリントン卿の思想や苦悩
一つ一つのテーマや人間性がとても深く、読み応えがある
いやぁ、じんわりきた!きた!
スポンジになった自分にじわじわ素敵な文章がしみ込んでくる
切なく物悲しい内容のはずだが、「悲」より「美」を際立って感じてしまい、なんだか自分は不謹慎なのか?と思えてしまう…
どんな時でもキラキラした静かな湖畔の景色が延々と続くような文章と内容であった
そしてこれまた効かせるユーモア!
品があるのだが、なかなかニヤリとさせられる
ミス・ケントンとのやりとりはニヤニヤが止まらず困ってしまった!
決して派手では無いのだが、心にずーーーんの響く
読んだ後もスポンジになった自分は素敵な物語がしっかりしみ込んだヒタヒタの中に心地よく浸かって、切なくも気持ちよく余韻を楽しんだ
次はどの作品を読もうか
それくらい気に入ってしまった
スティーブンスは新しいアメリカ人の雇い主ファラディときっとジョークを飛ばし合える良い関係を築いていけるようになったんじゃないかな…
そう思いたい
- 感想投稿日 : 2020年4月26日
- 読了日 : 2020年4月26日
- 本棚登録日 : 2020年4月26日
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