新装版 人間の証明 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2004年5月15日発売)
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感想 : 189
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 昭和52年、東京の高層ビルの展望レストランで一人の黒人ジョニー・ヘイワードが殺された。彼が残した言葉「ストウハ」と「キスミー」。そこから棟居刑事は西條八十の詩になぞらえた悲劇的な事件を紐解いていく。
 ジョー山中が亡くなったのをきっかけに読了。

 このストーリーの登場人物は追われるものも追うものも、誰もが家族や昭和という時代の被害者だ。 そういうものに対する憎悪やそれでも家族や人間を信じたいという葛藤の中でそれぞれの登場人物が動いていく。
 いくつかの事件が並行して進んでいき、それはそれで面白いが、全ては棟居刑事が容疑者八杉恭子の人間性に賭けるというラストの為の壮大な布石の様に思えた。
 棟居刑事のあの有名な「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね...」の詩の朗読。それに応えて落ちる八杉が語る真相。ジョニーが刺された場所から高層ホテルまで向かった本当の理由...。このラストシーンをipodで購入した「人間の証明のテーマ」を聞きながら読んだ私は、職場の休憩時間なのに号泣した。。。

 人の醜さ、憎悪、そしてその中に隠れながらも小さく光っている愛、人を信じる心を描いた昭和の最高傑作。
 映画も原作も文句なく素晴らしい。 

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学(小説)
感想投稿日 : 2011年8月23日
読了日 : 2011年8月22日
本棚登録日 : 2011年8月9日

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