精神科医が日本や既に同様の現象が起きた諸外国の統計を基に、なぜ1999年を境に日本でうつ病が急増したのかを解き明かす。
作者はかなり早い段階で結論を言ってしまう。それはSSRIという新薬が登場したからだ。薬価の高い新薬を売る為に大手製薬会社が中心となってうつの啓蒙活動をしたことでうつ病の受診者、うつ病者が増えていき、結果として精神疾患の休職者も増えていく。
ここまでしっかりとデータとして”SSRI現象”が見えるのに、筆者がそれを糾弾するトーンが弱いと感じる読者が多いかもしれない。それは精神医学が他の医学より曖昧な部分の多いところによるからではないかと思う。うつ病とうつ気分の厳密な区分けは難しく、本人が自分がうつっぽいと思って受診するとたいていうつ病とつけてしまいがちだ。職場の休職も絡めばその傾向は一層強くなる。ないところに病気を作り出しているわけではないので、はっきりと糾弾できるものでもないのだろう(ただ海外では訴訟も起こっている)。
筆者はうつ病の入り口が広がってしまった現在、如何にその出口(回復)
も広げていくかを考えていくことが重要だと説いてこの本を結んでいる。
うつ病に関する本がとても増えた昨今、一般的なうつの本や体験記と並んでぜひ読むべき一冊。精神疾患と社会の関係性を考える上でも必読。常にどこかでこういった視点を持っていなければならないと思う。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
精神医学
- 感想投稿日 : 2011年7月13日
- 読了日 : 2011年7月12日
- 本棚登録日 : 2011年7月9日
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