ヒトラーとは何か: 新訳

  • 草思社 (2013年1月1日発売)
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感想 : 16
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 ヒトラーとは何だったのか。大戦当時からのドイツを代表するジャーナリストが彼の行動からその政治信条を読み解いていく。

 これは衝撃的な本である。
 ヒトラーは早い段階で、ヨーロッパを軍事的に制圧すること、ユダヤ人を根絶やしにすることの二つを決めた。これはヒトラーが国家(民族)は拡大のみを目指すのが当然であるという思考からだと言う。ユダヤ人は国家という形でなく統一を目指す全国家の敵だと彼は考えた。
 さらにそれらの目標を自分一代で成し遂げることまで決めてしまった。後継者も国家体制づくりも彼には関係ない。自国の敗北が決まった時は、いかに負けるかではなく、なるべく敗北を遅らせて、ユダヤ人と不甲斐ないドイツ国民を道連れにすることさえした。
 ヒトラーは一貫してこういった政治信条のみを持っていた。ドイツでの権力掌握からフランス制圧まではたまたま相手が自滅する状況であっただけで、一切の建設的な思考はなかった。
 もちろんハフナーの言うことが全て正しいとは限らないだろう。ただ、この本の持つ圧倒的な説得力が、なるほど!と強く唸らせる。

 私達はたまたま政策がうまくいっただけでその政治家を評価してしまったりしていないだろうか。政治家は信条でも評価しなければならない。
 ヒトラーや第二次世界大戦からまだまだ学ぶことは多い。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歴史
感想投稿日 : 2013年3月8日
読了日 : 2013年3月8日
本棚登録日 : 2013年2月23日

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