エネルギー研究の専門家である著者が、身の回りの様々な話題に関する数字を取り上げ、異なる視点や視座から分析することで、表面的に見ただけではわからない真実を明らかにする一冊。
著者は世界経済や環境、社会問題やイノベーションなど多様な話題にまつわる数値データを提示し、それらをどのように見るかによって我々が認識すべき事実が時に誤解に基づくものであることを、多くの事例を基に説明するが、例えば類似の書籍であるハンス・ロスリングの「ファクトフルネス」のように我々が数値を見て誤解するメカニズムを類型として整理するわけではなく、またスティーブン・ピンカーの「21世紀の啓蒙」のように、科学的思考を信頼すべきというような全編に通底する明確なテーマがあるわけでもない。
それもそのはずで、本書はもともと専門誌に短編コラムとして連載された内容をまとめたものであり、最初から書籍として出版する予定はなかったという。なので、項目の一つ一つは簡潔で読みやすくまとめられているものの、それぞれが話題として興味深いというレベルに留まり、一冊の書籍としての読み応えという点では前述の2冊とは趣を異にしている。とはいえ、著者の主張には頷く点も多く、特に最先端の技術動向に踊らされることなく、もっと身近にある単純な解決法に目を向けるべきという意見は説得力があり、また親日家でもある著者の時に厳しく、時に模範として取り上げる日本の事例も興味深い。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ソーシャルイノベーション
- 感想投稿日 : 2021年9月24日
- 読了日 : 2021年9月24日
- 本棚登録日 : 2021年9月24日
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