太宰の遺作でもあり、タイトルからしてものすごく悲惨なメンヘラ小説を想像していたのだが、読んでみたら明るいコメディ小説で引き込まれた。これはめちゃおもしろい。軽妙で気楽に読めるし、太宰のMCぶりとやらが存分に発揮されていると思う。太宰はこういうふざけたところも持ち味だと思うし、初めて人間失格を読んで引いた私が再読しようと思ったのは太宰の全力でふざけているところに気づいたからだ。かなり続きが気になる。何故最後まで書かないで死んだんだ!ちゃんと書き終わっといてくれ!と言いたくなった。死人に口無し。悲しい。
再読。後期の太宰からは触れれば切れるような鋭さを感じる。「眉山」「男女同権」は人間失格にも通ずる虚無的な暗さがある。「冬の花火」が好き。戯曲を書いていたことに驚かされた。「饗応夫人」はなんだか悲しい。「グッドバイ」は笑えるが中期太宰ののびやかなユーモアより引きつった捨て身の笑いを感じた。返す返すも未完が惜しい。全体的に荒廃的で捨て鉢な雰囲気が漂っていて、太宰は新しい段階に進もうとしていたのかそれとも破れかぶれになり死を決意していたのか。凡才の私にはわかりかねる。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
文学
- 感想投稿日 : 2016年5月21日
- 読了日 : 2015年12月1日
- 本棚登録日 : 2015年12月1日
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