いずれも終末を描いた「箱舟はいっぱい」「どことなくなんとなく」「カンビュセスの籤」、この3編がとりわけ妙なリアリティをもっていて恐ろしく読者の前に迫ってくる。
「箱舟はいっぱい」では、人類が滅亡すると見せかけ、ロケットで脱出するという詐欺があったが、それは国民の目を騙すものであったが、どっこい、
実はそれは本当に地球が壊滅的影響をもたらすという真相を欺くダミー機構であり、国の要人が静かにシェルターの中に入っていくためのものであったというとんでもないどんでん返しである。
「どことなくなんとなく」
みなさんは、「自分が直面している現実は、実はすべて偽物で、自分は本当は培養液のなかの脳だけであるのではないか」といった考えをしたことはないだろうか。
この作品では、あるサラリーマンの抱えた「自分が絶対無のなかにポツンと置かれているような孤独と恐怖」がテーマで、描かれるものは彼の日常的な生活と、それに対するリアリティのなさという悩みだが、
一気に、それが崩れ、宇宙のなかの虚空に主人公が置いていかれる。
「カンビュセスの籤」
古代ペルシアの戦争で、食料が尽き、籤を引いて人間同士食べ合うようになった状況の中から、生きたい一心で霧の中へ逃げ込み、
タイムスリップして「終末戦争」後の人類が一人しかいない世界という別の地獄に飛び込んできたサルク。
そこでも、地球外の生命体への救いの応答を待ち、何万年ものコールドスリープを続けるが、そのための食糧として人間を「ミートキューブ」にして生き延びる以外手がないという極限の状態であった。
1999年7月に地球が滅びるなんていうノストラダムスの予言があって、子どものときは酷く恐ろしく思えたのだが、
また2012年に何かが起こるなんていう終末論も囁かれるようになってきた。
本当に人類が滅亡するのは実は本当にあっけないことかもしれない。
・・・怖くなってきた。
- 感想投稿日 : 2013年7月11日
- 読了日 : 2013年7月11日
- 本棚登録日 : 2013年7月11日
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