国際秩序 - 18世紀ヨーロッパから21世紀アジアへ (中公新書 2190)

著者 :
  • 中央公論新社 (2012年11月22日発売)
4.29
  • (49)
  • (43)
  • (14)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 692
感想 : 46
5

「国際政治論」の参考文献。
以下、本書より。

ニクソンはかつて、「世界史の中で長期にわたる平和が存在したのは、バランス・オブ・パワーが存在した時代だけである」と語った。本書のなかで国際秩序の歴史を概観するかぎり、そのような認識が基本的に間違いではないことがわかる。確かに勢力均衡のみでは平和を永続させることはできない。しかしながら、平和を永続させるための「協調の体系」や「共同体の体系」を確立するためには、「均衡の体系」を否定するのではなくむしろそれを基礎に置くことが重要となる。
だとすれば、日本外交の未来を考える上で、日本にとってアメリカと中国のどちらが必要かという選択が、意味を持たないことがわかるだろう。また、アメリカと中国の両国とも日本にとって重要であるというのも、今後の日本の戦略を考える上で十分な回答とはならない。
重要なのは、日本が十分な国力を備えて、日米同盟を安定的に強化して、アメリカが東アジアへの関与を継続できる環境を整えて、その上でこの地域において価値や利益を共有することである。価値を共有することで安定的な「均衡の体系」を構築し、その基礎の上に日中での協力関係を発展させ、この地域の平和を確立することが必要となる。
われわれは自国の利益や、この地域の平和を考える時に、あくまでも国際秩序全体を視野に入れる必要がある。それを可能とするためには、しっかりとした歴史観を持ち、そして長期的な視野を持つことが必要だ。平和を願い、友好関係を期待するだけでは、われわれはそれを得ることができない。それを実現するための強靭な論理を持たねばならない。国際秩序とは何かを理解すること。それが、そのための最初の一歩なのかもしれない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年7月18日
読了日 : 2018年7月18日
本棚登録日 : 2018年7月18日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする