八日目の蝉 (中公文庫 か 61-3)

著者 :
  • 中央公論新社 (2011年1月22日発売)
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誘拐は許させることではないけれど希和子が薫に注いだ愛情が真っ直ぐで愛おしくどうか逃げ切ってほしいとさえ願ってしまった。妻帯者と知りながらも関係を続けた希和子の愚行を諌めたいが、産めない身体になってしまった背景には同情した。何もかも捨てる覚悟で本当の母親以上に薫を大事に育てていることが痛い程伝わりこのまま平穏に暮らしていければどんなに良かったか…
誘拐犯に育てられた子ども恵理菜は、実母は母親らしくない母親で家族とのわだかまりを解消できずに成長していた。全部誘拐したあの女が家族をめちゃくちゃにしたと憎んでいた。しかし、恵理菜自身身籠り、小豆島を眼の前にしてふいに連行され離れ離れにされたときの母親の叫びを、「この子はまだ朝ごはんを食べてないの!」と思い出す。認めたくない、思ってはいけない、と気づかないようにしてきたけれど心の奥底に潜む思い、あの人とずっとあそこで生きていたかった。恵理菜を誘拐したあの人は、薫にとっては間違いなく世界に一人の優しかった「お母さん」だったと、そしてまた母親らしくない母親も「お母さん」なのだと、この子と共に生きていくことを決意したところで気付いた場面にジーンとした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2023年11月17日
読了日 : 2023年11月17日
本棚登録日 : 2023年11月3日

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