ウィトゲンシュタインはこう考えた-哲学的思考の全軌跡1912~1951 (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2003年7月19日発売)
3.60
  • (26)
  • (27)
  • (56)
  • (5)
  • (2)
本棚登録 : 615
感想 : 25

P7
ある男が奇妙で複雑な哲学的問題について
生涯考え続けたとしよう。
彼の思考が生み出したものは
なんの役にも立たず、
誰の関心も惹かなかったが、
彼は哲学的思考のおかげで生きることができ、
その果てに安らかに死ぬことができた。
この男の生涯は幸福だったのであり、
男の哲学的思考は彼にとって比類なき価値を
持っていたのである。

男が生み出したものが、
実は人々のものの見方や生き方を根本的なところで
動かす力を持っていることが後になって判明したとしよう。
男の存在はにわかに我々の心を激しく揺さぶるような
属性を帯びはじめるだろう。
それは「時に背を向けながらも、
そのことによって時を超える者」という属性である。
こうした者をある種ヒーローと呼ぶことができよう。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2020年1月22日
本棚登録日 : 2020年1月14日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする