詩的私的ジャック (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1999年11月12日発売)
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感想 : 658
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真相を知ってから、358ページの会話を読むと、そのやりとりの絶妙さに思わず唸ってしまった…

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2つの大学での連続女子大生密室殺害事件が起こる。

捜査線上に浮かんできたのはロック歌手の結城稔だった。
彼の曲の歌詞をなぞらえたかのような殺人の手口…
本当に彼が犯人なのか…?

お嬢様大学生・萌絵は情報を集めていくものの、真相にたどり着くことができないでいた。
一方、犀川助教授は…

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S&Mシリーズ第4作目。
究極の消極的探偵・犀川は、あまり事件に関係してこないにも関わらず、萌絵もたどり着けなかった真相にポンと気づいてしまうところが、恐ろしいです。
というか、このシリーズを読めば読むほど、犀川という人物がますます遠くなる感覚を覚えます。
例えるならば、ウルトラセブンに出てくる諸星ダンのような…身体は人間のように見えるけれども、中身は地球人ではないような…
ちょっと大げさかもしれませんが、そんな風に思えてしまうのが犀川という人物です。
それと同時に、ウルトラセブンが地球を離れて帰っていってしまったように、いつか犀川も“どこか”へ行ってしまうのではないかと、危惧してしまいます。
今後、犀川と萌絵の関係性も、どうなるのでしょうか…

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分厚い1冊であり、物語の8割は萌絵がつかんでくる情報が書かれているのですが、全然真相がわかりません。
正直、5割くらい読んだ時点で、あまりに真相らしきものがわからなくて、じれったさマックスになりました。

もちろん犯人の予想は自分なりに立ててみるのですが、今回もまったくのハズレでした。
特に358・359ページに書かれている犀川とある人物との会話は、初見ではチンプンカンプンであり、その場にいた萌絵のセリフ「もう!何の話をしているの?二人とも…」(359ページ)という叫びに、「わかる!その気持ち!」と思ってしまいました。
しかし真相を知ってから改めてそのページの会話を読んでみたところ、驚くべきことにちゃんとかみ合っているのです会話が。
驚愕でした。

しかも、ある人物の、ある相手への苦しい恋心を示したこの一見不可思議な会話のやりとりは、その恋の“苦しさ”を真に知ったとき、とてもせつなくなりました。

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トリックも正直なところ、勉強した内容を全部学校に置いて卒業した身のわたしには、なかなか理解するところまでいきませんでした。
なので真相部分では、人間模様のほうに重きをおいて読み進めました。
それでも十分、楽しめました。

真相にたどり着くまでの道のりは長いですが、なんとかがんばって歩ききっていただければ…と思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年5月12日
読了日 : 2021年5月12日
本棚登録日 : 2021年5月12日

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