数奇にして模型 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2001年7月13日発売)
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本棚登録 : 6923
感想 : 456
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本人にとっては矛盾のない言動も、他人からみたら理解不能な思考になる。

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模型交換会会場と、M工業大の実験室で同時間帯に起こった2つの殺人事件。
そのどちらもの事件の容疑者となったのは、社会人大学院生の寺林だった。

本当に寺林が犯人なのか…?
殺人のあと、実験室にあった弁当を食べ、容器をきれいに洗ったのは誰か?
そして模型交換会会場の被害者は、首がない状態だったのはなぜ…?

珍しく、事件について自ら考える犀川助教授だったが…

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S&Mシリーズ第9作。
やっと本編らしい物語にもどってきたな、という印象です。
そして登場人物一覧も復活!(嬉)

とにかく珍しいのは、最初から最後まで犀川が事件に絡んでいることです。
しかも考えるだけでなく、重要ないくつかの現場に、犀川はきちんと居合わせています。
これがとても珍しく、うれしい反面、今までと違う犀川の行動に、非常に困惑します。
どうしたんだ犀川…!?

あまりの分厚さに「読みきれるか…?」と不安になりましたが、半分をこえたあたりからおもしろくなり、あやうく朝を迎えるところでした。危なかったです。
でも、結末を読んだあとも、行動の意図がついにわからなかったものが残されました。
なぜ、その人はそんな行動をとったのか…?

その人にとっては矛盾のない行動も、たにんからみたら理解不能な思考になる…。
だからその人物の行動も、犀川の行動も、中に渦巻くものも、すべては理解できない…
なぜなら、犀川とわたしたちは違う人間だから。

「子供の頃には、何でも素直に言えて、素直に聞けたのに。
理由のわからない力に支配され、少しずつ不自由になっているようだ。
これが大人になるということだろうか。
ちょっと馬鹿馬鹿しい。」
(696ページ)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2021年6月20日
読了日 : 2021年6月19日
本棚登録日 : 2021年6月19日

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