おもしろい。
とにかくおもしろい。
こんなにおもしろいSF物語は、そうそうお目にかかれません。
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時は1945年。
主人公の浜田俊夫少年は、空襲のさなか、息絶えようとする隣人の「先生」から、「18年後に、この場所に来てほしい」と頼まれます。
おとなになった浜田は、「先生」 との約束通り、18年後にその場所をおとずれます。
そこで浜田が目にしたのは、タイムマシンと、ある女性の姿でした…
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冒頭部分の読みにくい文章に、面食らった方もいるかもしれません。
正直、そこは読み飛ばしてよいので、次のページを必ずめくってください。
物語の世界に入りこんでしまう文章が、そこから瞬く間に広がっていきます。
この小説は「プラス・ゼロ」「プラス18」「マイナス31」「ゼロ」「マイナス・ゼロ」という、ふしぎな響きの章から成っています。
はじめはその章タイトルの意味がさっぱりわからなかったのですが、読み終わってようやく意味を知り、「そうだったのか…」と、ぼう然としました。
「プラス・ゼロ」「プラス18」までは想定範囲内の話運びで、「マイナス31」も、ところどころ「?」と思うところはあるものの、8割方は「ふむふむ」という感じで読み進めました。
しかし、その様子がすこしずつ変わってきたのは、「ゼロ」の章からでした。
「マイナス31」であらわれていた伏線が、すこし回収に入りつつある…と思いきや、終章「マイナス・ゼロ」では、「えっ??」という角度から新たな真実があらわれ、物語は終わりを迎えたのです。
実は最初、終章「マイナス・ゼロ」で回収されていく伏線の真実の意味が、よくのみこめませんでした。
しかしネットで「登場人物の年表」を発見し、物語と見比べて整理することで、ようやく種明かしを理解したと同時に、とてつもないおもしろさが一気におしよせてきたのです。
(年表をつくってくださった方、ありがとうございました。)
この物語を考えて書き上げた著者のすごさに、心底しびれます。
なにしろこの小説がはじめて単行本化されたのは、平成でも令和でもなく、「昭和45年」なのですから…
伏線はすべて回収されますが、ひとつだけちょっと無理があるんじゃないかなというところ(494・495ページ)が含まれています。
そのため☆は4つにはしましたが、その点をさしひいても、見事なSF物語でした。
- 感想投稿日 : 2020年4月2日
- 読了日 : 2020年4月2日
- 本棚登録日 : 2020年3月18日
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