予想どおりに不合理 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 増補版

  • 早川書房 (2010年10月22日発売)
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人間の行動は不合理にあふれていて、しかもその不合理には規則性がある…。

デジタル大辞泉によると「不合理」の意味は、「道理・理屈に合っていないこと。筋の通らないこと。また、そのさま。」だそうです。

この本は不合理な人間の行動を、実験から証明したものです。
15におよぶ各章であきらかにされる不合理な規則性は、とても興味深いテーマばかり。
不合理なのに規則性があるなんて、おもしろいですよね。

わたしはこの本を読みきるのに、ほぼ2週間かかりました。
なぜかというと、各章とも語り口は軽やかなのに内容がとても濃く、1章読み終えるごとに、長編小説冊読み終えるくらいのエネルギーを使っていたからです。

読み終えたあとも、自分の身近にこれと似たエピソードはなかったかなと考えてしまうため、とても頭の力を使いました。
そのため1日1~2章ずつ読むのが限界で、結果、1冊読み終えるのに2週間かかってしまったわけです。

不合理な行動は、人にプラスもマイナスも、もたらします。
しかしこの不合理性が備わっていることこそが人と機械のちがいそのものです。

「予想どおりに不合理」を読んでいると、人生をおもしろく生きるためのエッセンスは、不合理性を自覚して生きることのなかに隠されているのではないか…と思えてきます。

2週間かけてこの本を読みきることは、一見効率が悪く、とても不合理な行動に見えます。
けれど、人に備わっている不合理な法則を知って生きることで、不合理な選択をかわせたり、不合理性を逆手にとっておもしろがることもできるはずです。

15章で筆者はこのように述べています。
「たとえ不合理があたりまえのことであっても、だからどうしようもないというわけではない、ということだ。いつどこで間違った決断をする恐れがあるかを理解しておけば、もっと慎重になって、決断を見なおすように努力することもできるし、科学技術を使ってこの生まれながらの弱点を克服することもできる。」(411ページ)

人間の行動の不合理性に目を向けることは、弱点をさらされているような気持ちになり、目を背けたくなるかもしれません。
けれど、人間は機械のように合理的には生きられないのもまた事実です。

そして人間の不合理な規則性をなくすことができないのならば、不合理性を知っておくことは、生きる上でとても大切なことです。

不合理なのにおもしろい。
それが人間という生き物なのかもしれません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 生きること、死ぬこと
感想投稿日 : 2020年3月26日
読了日 : 2020年3月26日
本棚登録日 : 2020年3月15日

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