Separation

著者 :
  • 星雲社 (2002年1月1日発売)
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本棚登録 : 698
感想 : 106
3

好きな人と、おなじ時間軸で年を重ねられること。
それがどんなにしあわせなことなのかに、今
気づいた。

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(Separation ーきみが還る場所)

高校の同級生だった井上悟と五十嵐裕子。
2人は互いの両親の反対を押しきり、結婚する。

2人きりのしあわせな日々を過ごしていた悟と裕子だったが、ある日裕子の身体に異変が起こりはじめる。
そう、裕子の身体と精神は、すこしずつ若返っていったのだった…。

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中編「Separation」(☆4)と短編「VOICE」(☆2)からなる1冊。
どちらも、井上悟と五十嵐裕子を軸にした物語ですが、パラレルワールドのような感じで、2人のたどる道はそれぞれにちがっています。

「VOICE」は、主人公である悟があまりにも卑屈で自分を卑下していたため、その後ろ向きすぎる生き方にどうしてもなじめませんでした。
しかし「Separation」は、とてもとても悲しくて最後には号泣してしまいました。
読みながら映画「ベンジャミン・バトン」を思い出しました。(こちらもとてもいい映画です)

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悟は年を重ねていく、けれど裕子は若返っていく。
ある日を境に、2人の時間は180度反対になってしまいます。

若返ると聞くと、とてもうらやましく感じるかもしれません。
しかしそれは、好きな人がいない前提でのことかもしれません。
ひとたび好きな人と出会ってしまったなら、しかもその人とちがう時間軸で生きるということは、こんなにもしんどく切なく、哀しいお別れが待っているのです。

読み終えてまず思ったのは、わたしは夫と時間軸が一緒の世界に生きられて、しあわせだなということでした。
そう思うと、わたしも夫もここに生きている、ただそのことがとても不思議になると同時に、ありがたく、涙が出てくるのでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年10月30日
読了日 : 2020年10月23日
本棚登録日 : 2020年10月22日

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