優しい音楽

著者 :
  • 双葉社 (2005年4月1日発売)
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本棚登録 : 2456
感想 : 439
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2021年11月号の雑誌「ダ・ヴィンチ」が、瀬尾まいこさん特集でした。
瀬尾さんの小説は、いくつか読んだことがあったのですが(ちなみに中でも好きな3作挙げるなら「戸村飯店青春100連発」「強運の持ち主」「傑作はまだ」です。2021年11月時点)、まだまだ読んだことがないお話があるんだなあ…とわかりまして、まず手に取ったのが本書「優しい音楽」です。

本書は「優しい音楽」「タイムラグ」「がらくた効果」の短編3本から成り立っています。どのお話も独立して読めます。

「優しい音楽」は、主人公・タケルと、のちに彼女になる千波との、ふしぎな出会い方がまず、ポンと置かれます。
ただ、その出会いをふしぎに思っているのはタケルだけで、千波には理由はわかっているのです。その理由とは…あっ、モゴモゴ…(口をナニモノかに塞がれる音)

「タイムラグ」は、不倫相手・平太から、「妻と旅行に行くから、娘預かってちょ」と言われた深雪と、娘の佐菜ちゃんのお話。
少しずつ、平太の妻のことがわかるにつれ、平太、実はいいやつ?!と見せかけてきますので、ぜひともジャッジをお願いします。
ちなみにわたしは最後まで読んでも平太アウトー!でした。

「がらくた効果」は、いつもがらくたを拾ってきてしまう恋人のはな子が、今度は人を“拾って”きてしまうお話。
唖然とする主人公・章太郎でしたが、“拾われて”きた佐々木さんとの関わりが、2人に変化をもたらします。さてそれは、どんな変化だったのでしょう?
あれですかねこれは、一緒に怖い体験すると、吊り橋効果でふたりともくっついちゃうやつですかね、これ。(いや違うし)

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日常のなかの、ちょっとした違和感は、それぞれを立ち止まらせて考えさせるきっかけを作ります。
ふだんの暮らしでは、実際にそうした違和感に出会えないことの方が多いかもしれませんが、「優しい音楽」を開くと、そこにはさりげない違和感がキュッと置かれています。
それが登場人物たちだけでなく、読み手の日常にも「タイムラグ」はすこしありつつも、「がらくた効果」をおよぼしてくれるのですね。

超能力者が飛び交ったり、実は命の危険のある場面に出会したりはしませんので、インパクトという意味では物足りなく感じるかもしれませんが、何気ない日常の中、ふわっと「アレ?」とちょこっと歩みを止めるにはぴったりの短編たちですので、よろしければこの感想を読んだ方に、バトンのようにお渡しできたらとおもいます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 瀬尾まいこ
感想投稿日 : 2021年11月4日
読了日 : 2021年10月30日
本棚登録日 : 2021年10月29日

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