夏の庭―The Friends (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1994年3月1日発売)
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本棚登録 : 16103
感想 : 1815

このお話は、読んだ人の年齢や今置かれている立場によって
感じたことや想ったことが、みんなそれぞれどこか似ているようでも
実はみんな違う...読み終えてからしばらく心に残る余韻は
読んだ人の分だけあるような気がしました。

それはたぶん...(もしかしたら私だけなのかもしれませんが..)
ここに登場する三人の少年たちのひと夏の経験を、同じ年ごろだった自分とを重ねて
自分にとっての一番身近なお年寄りである、祖父母のことを思い出して懐かしんだり
その頃の友達のことや、学校生活、夏のプール、サッカー合宿
そして怖い話なんかにも、ふっとどこかに自分を重ねて回想してみたりする
そんな想いを呼び起こしてくれたお話だったと感じたからです。

その頃の私は祖母と一緒に暮らしていました。
祖母は明治の生まれで、日本髪を結い上げたり、日本初期の
パーマネントの機械も備えている髪結いさん(美容師)でした。
立ち仕事だったからなのか足腰がとても丈夫で、何をするにも大抵は
自分の足でどこまでもしゃんしゃん歩いて事こなしていた人だったので
私が物心つく頃から皺くちゃで細くて小っちゃくて、華奢なおばあちゃんなのに
何年たっても変わらない...ように見えていたおばあちゃんでした。

だからあの頃"死ぬ"なんてこと、考えてもみなかった..。
誕生日や敬老の日に贈る"長生きしてね"のメッセージでさえも
お体裁のように書き添えていただけだったかも...と思ったくらいです。

けれども、息が止まると死ぬとか、しゃっくりが百回止まらなかっから
死んじゃうよ! とか、(←作中にはないです)そんなことは
あぁ..あったあったあったよね~...と思い出して。(笑)
子供ながらに怖がったりふざけあったりしていたことが
とても懐かしく思い出されました。

三人の少年たちにとってこの夏休みの出来事は
少しだけ胸に痛むものもあっただろうけれど(動機)
ほかの友達には出来ない事がやれているような
ちょっと自慢もしてみたくなる大冒険だったことでしょう。
そしてそこでは人と触れ合うことの優しさや寂しさも味わって...

この先十年二十年三十年経って、あの少年たちもいつの日か
このひと夏の経験を思い返すようなことがあったなら、
どんなふうに懐かしく思い出すのかなぁ...と想像してみたりして。^^

"だってオレたち、あの世に知り合いがいるんだ。
それってすごい心強くないか! "

なんとも微笑ましい..♪
そっか....それなら怖くないよね...。^^

この一言は、今の私自身にとっても心に響く言葉でした。

コスモスの花咲く風景を目にしたらきっと思い出します。
三人の少年たちとおじいさんと夏の庭。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年11月23日
読了日 : 2017年11月9日
本棚登録日 : 2017年11月16日

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コメント 2件

nejidonさんのコメント
2017/11/24

yumiieさん、こんにちは♪
感動がよみがえる素敵なレビューですね!
細かい部分はかなり忘れているので、再読したくなりました。
この本は読感文の課題図書になったことがあったように思います。
そうなると、感動しなくちゃいけない作品になってしまうのが、惜しいです(笑)。
そんなことは抜きにして、多くの子どもたちに読まれてほしい名作だと思います。

yumiieさんのコメント
2017/11/24

nejidonさん、こんばんは!
コメントありがとうざいます♪

こちらは教科書なんかにも載せられているのでしょうか...?
とすれば確かに、少年たちのしたことやおじいさんとの交流そのものに道徳を求めたり
人と触れ合うことで感動するという事の方が大きいのかもしれないですね。
読みながら、そんな思いは私にもありました。
だけど読み終えて心に残っていたのは、なぜか私のおばあちゃんのくしゃくしゃな笑顔で...。^^
お年寄りとの触れ合いといわれて自分と祖母とを重ねちゃっていたんですね。
とても嬉しくて楽しい時間でした。
大人にも子供たちが感じることとはまた違ったよい思いが伝わると思います。
ぜひまた読んでみてください♪

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