生物多様性 - 「私」から考える進化・遺伝・生態系 (中公新書)

著者 :
  • 中央公論新社 (2015年2月24日発売)
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感想 : 24

「生物多様性は何故守られなければならないのか?」の問いに対して、巷では「人類にとって有益だから」と説明されることが多い。しかし、破壊するだけ破壊しておいて、やっぱり役立つし大事だと気付いたから守ります、というのは虫が良すぎる上に、どちらにしろ人間のエゴでしかないやんとかねがね思っていたので、納得のいく理由を探しに本書を手に取った。
前半は、前提として生物多様性とはどういうものなのか、有益といわれる理由(生態系サービス)や、特に多様性に富んでいる熱帯雨林やサンゴ礁の状況、生物の進化の歴史などを交えて大変わかりやすく説明されている。
後半は、なぜ守らなければならいのか、いかにして守っていくのかという話だが、だんだん哲学的・宗教的、また経済的なところにまで論が展開されており、やはり一方向からだけで理由付けできる簡単なものではないのだなあと感じた。
「どんな生物にも長い歴史があり、それぞれにしか持ちえない価値がある。また、人間と同じように生物も生きる権利を持っているから、それを人間が勝手に奪うようなことをしてはならない。」と説明されるのが自分の中では一番納得できるかな。ヒトが築いてきた文明にはすでに価値が見出されていて、文化財等として保護されてきているのだから、今度は他の生物の生き様にも敬意を払い、守っていくべき時代に突入したのだろう。どんな生物にも礼儀を持って接したいものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 新書
感想投稿日 : 2021年3月16日
読了日 : 2021年3月16日
本棚登録日 : 2021年2月6日

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