監獄の誕生 ― 監視と処罰

  • 新潮社 (1977年9月22日発売)
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大学新入生に薦める101冊の本 新版 (岩波書店/2009) で気になった本。

1757年のパリで一人の男が処刑された。本書はその様子を克明に描くことから始まる。残酷極まるこの身体刑は群衆の前で、公開で行われた。公開処刑のスペクタクル性は、ただ大勢をいうしかない、匿名の人々を集める力を持っていた。見せしめの効果によって、群衆は法と、法の背後に控える君主の権力を思い知る。秩序の維持は死を人に与えることによってはかられたのだ。
 この「死の権力」に代わる、新しい統治モデルとしてフーコーが提出したのが、パノプティコンだ。ベンサム(1748-1831)Michel Foucault(1926-84)は初期の『狂気の歴史』で狂気と非理性の排除・監禁を語った。『監獄の誕生』では、この排除・監禁という発想がどのようにして規律・訓練的な権力の行使に置き換わったのかを分析している。本書には「排除空間へ、規律・訓練的な基盤づくりに特有な権力技術が適用されたのが19世紀の特色である」という言葉も見える。本書によって提示された「微視的権力」のアイデアが、のちに出された「性の歴史」の第一巻『知への意志」でより精緻に展開されて、「生権力」すなわち人を生かす権力の作用を解明するのに役立てられている。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: [未読]県立図書館
感想投稿日 : 2017年5月21日
本棚登録日 : 2017年5月21日

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