すべてのまぼろしはキンタナ・ローの海に消えた (ハヤカワ文庫 FT)

  • 早川書房 (2004年11月9日発売)
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本棚登録 : 213
感想 : 26
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図書館で目に留まって、本当に何となく手に取った一冊です。
作者のティプトリーさんは本当は女性(覆面作家)で、SF小説の名手なのですね。彼女の書いたSF小説は、私でも名前を知っているものばかりでした(中にはずっと読みたいと思ってるSFも!)

そんな彼女が、ファンタジー小説というあ、幻想小説を書いたのが今作です。
作者も、語り手もアメリカ人ですが、キンタナ・ローというメキシコの海を舞台にしています。
「リリオスの浜に流れついたもの」「水上スキーで永遠をめざした若者」「デッド・リーフの彼方」を収録しています。

語り手の「わたし」は同一人物なので、ゆるい連作短編集といったところでしょうか。
何となく手に取った一冊だけれども、読み始めると不思議な味があって、どんどん引き込まれていきました。海って本当に不思議です。何があってもおかしくないというか、何があっても許されてしまう場所というか。海が両性具有という考えには非常に親近感が湧くと同時に、納得してしまいます。

そんな私のお気に入りは「リリオスの浜に流れついたもの」ですね。
ドキドキして、少し怖いところさえあるんだけど、本当に面白いです。
幻想的な海と、それでいて海の怖さみたいな側面を余すことなく書いていて、自然に対する畏敬の念というものがこみあげてくる好篇です。
まさに世界幻想文学大賞の受賞作にふさわしい一冊でしょう。

この本を読んだら、作者のSF小説もまた読んでみたくなりました。ティプトリーさんのお話って、とにかく題名のセンスの良さが本当に素晴らしい、て思うのですよね。
海に出ることが多くなる夏の前、梅雨くらいの時期に、なんとなく読みたくなってしまう一冊で、今の時期に読めてよかったなって、想うそんな一冊でした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外ファンタジー
感想投稿日 : 2015年6月22日
読了日 : 2015年6月22日
本棚登録日 : 2015年6月22日

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