愛はさだめ、さだめは死 (ハヤカワ文庫 SF テ 3-1)

  • 早川書房 (1987年8月1日発売)
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この本は、1973年に発表されたジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの短編集です。ティプトリーは、女性でありながら男性のペンネームを使ってSF作家として活躍した人物で、本書は彼女の代表作の一つとされています。本書に収録されているのは、愛と死をテーマにした10の短編で、それぞれ異なる世界や時代、登場人物を描いています。しかし、その中には共通するメッセージがあります。それは、愛は人間の本能であり、同時に人間の運命であるということです。愛は、人間を幸せにも不幸にもする力であり、時には死に至らしめる力でもあります。本書は、その愛のさまざまな側面を、SF的な発想や技巧で鮮やかに表現しています。

本書は、SFというジャンルを使って、愛と死という普遍的なテーマを扱っていますが、決して一般的なSFではありません。宇宙人や未来人、人工知能や遺伝子操作、タイムトラベルやパラレルワールドなど、SFらしい要素が取り入れられていますが、それらは単に物語の背景や装飾ではなく、愛と死というテーマに対して、新しい視点や問題提起をもたらすものです。

一方で、本書は、SF的な発想と技巧とは対照的に、登場人物の心情や感情など、感情的な描写と表現にも溢れています。特徴的なのは、登場人物の感情を、言葉や行動だけでなく、色や音や匂いなど、五感に訴えるような方法で伝えているところです。感情的な描写と表現を用いて、愛と死というテーマを鮮烈に描き出しているのです。

ティプトリーは、SFとホラーのジャンルを駆使して、人間の愛と死の不可分性を見事に表現しています。その意味で、この本は、心に強く残る物語の宝庫と言えるでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(SF)
感想投稿日 : 2024年2月8日
読了日 : 2024年2月8日
本棚登録日 : 2024年2月8日

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