守り人シリーズ電子版 1.精霊の守り人

著者 :
  • 偕成社 (2006年11月1日発売)
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感想 : 20
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この本は、異界と人の世界が交錯するファンタジーの世界を舞台に、女用心棒のバルサと、皇子のチャグムの冒険を描いた物語です。バルサは、偶然にも川に落ちたチャグムを助けたことで、チャグムが父である帝に命を狙われていることを知ります。チャグムは、異界の水の精霊の卵を身体に宿しており、それが孵化するまでには大干ばつが起こるという予言があるのです。バルサは、チャグムの母である二ノ妃から依頼を受けて、チャグムを守ることを決意します。しかし、帝の追っ手や異界の魔物が彼らを襲います。バルサとチャグムは、幼なじみの薬草師タンダや呪術師トロガイの助けを借りながら、危険な旅を続けます。

この本の主要なテーマは、人と精霊の関係です。人の世界と精霊が住む異界は、密接につながっており、互いに影響し合っています。しかし、人々は異界の存在を忘れてしまったり、恐れたり、利用しようとしたりします。その結果、現在は自然のバランスが崩れて天変地異が起きているのだと言います。

この本では、バルサとチャグムが、人と精霊の間にある様々な問題に直面しながら、互いに理解し、尊重し、共生しようとする姿が描かれています。この本のおすすめポイントは、バルサとチャグムの成長です。バルサは、過去に苦しんだことで、人を殺すことに慣れてしまった女性です。しかし、チャグムを守ることで、人を救うことの意味や喜びを再発見します。チャグムは、閉ざされた宮殿で育ったことで、世間知らずな少年です。しかし、バルサとの旅で、人の世界の厳しさや美しさを目の当たりにします。二人は、互いに影響し合いながら、強く、優しく、賢くなっていきます。

この本を読んで、私は、バルサとチャグムの絆が深まっていく場面に涙が止まりませんでした。バルサは、まるで年の離れた弟のように愛し守ろうとし、チャグムは、バルサを自分の母親のように慕い、信頼します。二人は、血のつながりはないけれど、本当の家族のようになっていきます。その過程で、二人は様々な困難に立ち向かい、勇気と知恵と友情を発揮します。その姿には、心が震えました。

総評として、この本は、素晴らしいファンタジー小説だと思います。作者の上橋菜穂子さんは、まるで本当に訪れたことがあるかのように、非常にリアルで魅力的に異界の情景を描きます。物語の展開も、スリリングでドラマチックで、読んでいて飽きません。この本は、ファンタジーが好きな人はもちろん、人間の成長や絆に興味がある人にもおすすめです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(ファンタジー)
感想投稿日 : 2024年1月14日
読了日 : 2024年1月14日
本棚登録日 : 2024年1月14日

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