寄生獣(完全版)(1) (KCデラックス)

著者 :
  • 講談社 (2003年1月21日発売)
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パラサイトと人間の物語。

ある日地球に、人間に寄生して体を乗っ取る地球外生命体が降り注いだ。パラサイトは人間に気づかれることなく次第に勢力を拡大していく。高校生の真一のもとにも一匹のパラサイトが忍び寄り、寄生を試みるが真一の抵抗により、右腕だけに寄生するという中途半端な状態になってしまった。その後、真一と右腕に取り付いたパラサイト(ミギー)は他のパラサイトに狙われることになり、闘いが始まった。。。

一度は誰もが考えたことがあるだろう。「実は、地球上に人間なんていない方が他の生物にとっては幸せなんじゃないか?」と。人間は動物を乱獲し生態系を破壊してきたし、公害を発生させ自然環境は壊滅的な打撃を受けている。そして、そういったことを行う理由は「人間のため」である。どんなに環境保護を訴える人であっても、生態系のためだと人喰いトラを野放しにはしないだろう。人に害を与えないという条件のもと、環境保護が行われているということを忘れてはならない。

今、人間が必死に植樹をしているのも、魚の漁獲量を制限するのも、将来に人間が困らないためというが唯一の理由である。人はどこまでも利己的で、本当の意味で地球の将来を考えたことなど恐らく有史以来一度もない。地球をあらゆる生物の共有物だと見るなら、その覚悟があるのなら、今すぐ地下資源の採掘をやめるべきだし、二酸化炭素を吐き出す車など使うべきではない。

それでも人間は豊かになることを止められない。便利さと快楽への欲求は、そんなお題目が吹き飛ぶほどに強烈なものである。そんな人間という存在は、果たして地球の盟主たるに相応しいのだろうか。

いや、相応しくはない。そんな人間を見限った生物と人間の闘いを描いたのがこの漫画だ。

パラサイトは強い。生身で闘ったら人間にとても勝ち目はない。敵の親玉は、それは生態系にとって良いことだと話す。食物連鎖で人間の上にパラサイトが収まってこそ、地球の「総生物」にとって幸福なことであると考えるからだ。敵の親玉である広川が自衛隊に囲まれる中で演説をする

「人間に寄生し
生物全体のバランスを
保つ役割を担う
我々から比べれば

人間どもこそ
地球を蝕む寄生虫!!

いや……
寄生獣か」

ここでタイトルである『寄生獣』はパラサイトではなく人間を指していたのだと読者は気付くことになる。主人公の味方であるミギーも人間を厳しく批判する。

「私は恥ずかしげもなく「地球のために」という人間が嫌いだ・・・。
なぜなら 地球ははじめから泣きも笑いもしないからな。」

人の独善さを暴き、真の「環境保護」とは何かを世に問うた漫画。

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感想投稿日 : 2010年12月6日
本棚登録日 : 2010年12月6日

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