エパミナンダス 1

制作 : 東京子ども図書館 
  • 東京子ども図書館 (1997年12月1日発売)
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本棚登録 : 332
感想 : 33
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思い出深いのは、やはり「12の月のおくりもの」

主人公のマルーシカは、継母と姉娘に虐められている。マルーシカの美しさや気立ての良さが気に入らない二人は、真冬の森からスミレを摘んでくるまで家に帰ってはいけないと、マルーシカに無理難題を吹っ掛けて…

子供の頃、実家に小冊子版の「おはなしのろうそく」が一冊だけあった。それも、子供の本棚や家族の本棚ではなく、寝室にある母の化粧台の引き出しの中にいつも無造作に入れられていた。
母が仕事で留守の間、私は化粧台の引き出しから「おはなしのろうそく」を取り出しては、こそこそ読んでいた。変な本だな、と思っていたのを覚えている。子供のお話なのに、字は小さいし絵も少ない。台本みたいなページや、詩のページもあった。当時の私が一番読みやすくて、とびきり面白かったのが、この「12の月のおくりもの」だった。

美しいマルーシカ、あまりにも意地悪な継母と姉、雪深い森に燃え上がる大きな焚き火、不思議な12人の月の精たち…
月の精が杖を振ると焚き火が高く燃え上がり、スミレ咲く3月に、イチゴが赤い実をつける6月に、まっかなリンゴが実る9月に、森が一瞬で変化していく様子が自然と頭に思い浮かび、物語の世界に引き込まれていく。
文字だけでこんなにも鮮やかにイメージを呼び起こされる体験は、多分このお話が初めてだったと思う。今思えば、親に隠れて読んでいる後ろめたさやワクワク感も手伝っていたのかもしれないけど。

どうしてこの一冊(第2巻)だけが家にあったのか。母にこの本を読んで聞かせてもらった記憶はないけれど、かといって捨てられることもなくずーっと化粧台の引き出しに入っていた。不思議な思い出の本。

思い入れが深い分、「12の月のおくりもの」の読み聞かせはとても楽しい。いきいきとしたお話の力に、読んでいて心が慰められる。

でも、この本で娘がダントツ一番好きなのは「おいしいおかゆ」だったりする。今日も「12の月」読みたいな~と思いながら、「おいしいおかゆ」を2回読んだ。こちらも、豪快で美味しそうで、楽しいお話。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年11月28日
読了日 : 2021年11月28日
本棚登録日 : 2021年11月28日

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コメント 2件

workmaさんのコメント
2022/02/12

yutakochiさん
お母さんの化粧台の抽斗のなかの「おはなしのろうそく」………というエピソードや、こどもの頃に「おはなしのろうそく」にであっていたこと………羨ましいです。自分は、大人になってから「おはなしのろうそく」や、「語り」を、知ったので。絵本はよく読んでもらっていたんですけどね。
でも、大人になってからでも、よいおはなしに出会えたことは嬉しいことですね。ブクログを 続けていてよかったです(*^▽^*)

ちなみに、愛蔵版おはなしのろうそく「エパミナンダス1」のなかで、一番お気に入りは「エパミナンダス」です。自分の子どもも大好きで、また、小学校のボランティアでも、大いに笑ってもらえました。

yutakochiさんのコメント
2022/02/12

workmaさん

エパミナンダス、子供はみんな好きですが、私は最後の一文の手応えがなかなか掴めずにいます(^_^;)子供達はゲラゲラ笑ってはくれるのですが…

20代前半で親をなくしたので、母がなぜ「おはなしのろうそく」を抽斗に入れていたのかは、結局わからないままになりました。
でも、自分が親になり、読み聞かせをするようになって、この本が持つ「お話の力」があらためてわかった気がします。
昔話には、未来と過去に同時に繋がっていく力があるんだな、と。
「私の大切なお話」を子供達に手渡していく喜びと、子供の頃の自分に会えるような安心感を感じるんです。
私の下手くそな語りでも子供はとても楽しんでくれるし、私も語りながら癒される。すごい力だと思います。

私は、workmaさんに読み聞かせや語りをしてもらえる小学生達がすごく羨ましいです!
子供達の心の奥深くに、強く生きていく力の種が蒔かれていると思います。
私も一緒に聞きたいくらいです!(*^o^*)

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