思い出深いのは、やはり「12の月のおくりもの」
主人公のマルーシカは、継母と姉娘に虐められている。マルーシカの美しさや気立ての良さが気に入らない二人は、真冬の森からスミレを摘んでくるまで家に帰ってはいけないと、マルーシカに無理難題を吹っ掛けて…
子供の頃、実家に小冊子版の「おはなしのろうそく」が一冊だけあった。それも、子供の本棚や家族の本棚ではなく、寝室にある母の化粧台の引き出しの中にいつも無造作に入れられていた。
母が仕事で留守の間、私は化粧台の引き出しから「おはなしのろうそく」を取り出しては、こそこそ読んでいた。変な本だな、と思っていたのを覚えている。子供のお話なのに、字は小さいし絵も少ない。台本みたいなページや、詩のページもあった。当時の私が一番読みやすくて、とびきり面白かったのが、この「12の月のおくりもの」だった。
美しいマルーシカ、あまりにも意地悪な継母と姉、雪深い森に燃え上がる大きな焚き火、不思議な12人の月の精たち…
月の精が杖を振ると焚き火が高く燃え上がり、スミレ咲く3月に、イチゴが赤い実をつける6月に、まっかなリンゴが実る9月に、森が一瞬で変化していく様子が自然と頭に思い浮かび、物語の世界に引き込まれていく。
文字だけでこんなにも鮮やかにイメージを呼び起こされる体験は、多分このお話が初めてだったと思う。今思えば、親に隠れて読んでいる後ろめたさやワクワク感も手伝っていたのかもしれないけど。
どうしてこの一冊(第2巻)だけが家にあったのか。母にこの本を読んで聞かせてもらった記憶はないけれど、かといって捨てられることもなくずーっと化粧台の引き出しに入っていた。不思議な思い出の本。
思い入れが深い分、「12の月のおくりもの」の読み聞かせはとても楽しい。いきいきとしたお話の力に、読んでいて心が慰められる。
でも、この本で娘がダントツ一番好きなのは「おいしいおかゆ」だったりする。今日も「12の月」読みたいな~と思いながら、「おいしいおかゆ」を2回読んだ。こちらも、豪快で美味しそうで、楽しいお話。
- 感想投稿日 : 2021年11月28日
- 読了日 : 2021年11月28日
- 本棚登録日 : 2021年11月28日
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