前作は決闘場面が多く、息つく暇がないくらい展開が早かったが、本作はゆったりした印象。
城下で二人の侍と知り合い、その後、何故か城へ連行されてしまうゼン。
ゼンを「神様が雲の上から降りていらっしゃたような」という城の侍女(?)の言葉やシリーズ中で着かず離れずのノギとの嚙み合わない会話にホッとさせられる。
そして、稽古として一人剣を抜く場面。
(引用)
敵がいないとき抜く刃は、自らを清めるものだ。
静かに鞘から抜き、真上に立て、月の光に刃を当ててみる。
息を細く吐く。(中略)
己の剣は、ここにあるのだ。
そう‥‥。
立ち向かおう。
いつも、命を懸けて、ただ剣を振ればよい。
生きているから、恐くなる。
しかし、剣を持てば、もはや怖くなくなる。
森先生の文章のこの緊迫感に痺れる。
ゼンの剣は凄いが、決してスーパーマン的な剣豪としては描かれない。偶然や他からの助けを得て絶体絶命を生き抜けている場もある。これも森先生らしいということかな。
ゼンは剣のことばかりでなく、人や世の中の不思議にも思索を続けていく。その歩みに合わせて同行する読書だった。
本作では貴種流離譚の色が出てきた。さあ、次はどうなるかな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2018年1月7日
- 読了日 : 2018年1月7日
- 本棚登録日 : 2018年1月7日
みんなの感想をみる