水晶のピラミッド (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (1994年12月7日発売)
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感想 : 124
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島田氏、また凄い本を書きよって。

『暗闇坂の人喰いの木』を読んだ時はスケールの大きさにびっくりしたけど、本作品はその比じゃない。
なんせ、古代エジプトの話と、タイタニック沈没の話と、現代の話がない交ぜに構成され、そこにピラミッドの謎が入り込んでくる。
現代に怪物も出てくるし、これ、さすがに収拾つかないのでは…と不安にさせられた。

アメリカのとある島に造られたクフ王のピラミッドをそっくり模した建造物で殺人が起こる。その現代ピラミッドに付属する塔の7階で溺死体が見つかるのだ。そこに『暗闇坂の…』に登場したレオナが絡んできて、レオナが御手洗に解決を依頼して、やっと御手洗登場。
ピラミッドに関する諸説の話は凄く興味深くて、専門書を読んでみたくなった。
『暗闇坂の…』の石岡君のスコットランド旅行記が、本作品ではエジプト旅行記に代わる訳だけど、これまた素晴らしい紀行文で、ギザに行きたくなる。島田氏、異文化に触れた人の感銘を表現するのホント上手い。

古代エジプトのターンも、田舎の娘が都会に出てくる高揚感とか、ギザの美しさとか、景色が目の前に浮かぶような文章で、なかなか読ませてくれた。ここに出てくるピラミッドの原型の様子はおそらく一説に基づく創造なんだろうけど、凄く説得力あった。
結局現代パートとのリンクはほのめかす程度のものだったけど、読み物として面白かった。

現代ピラミッドの下部に海からアクセスする通路や秘密部屋があることを御手洗が暴くあたりから「こんなの分かるか!」って気分にさせられて、現代ピラミッドの仕掛けを御手洗が解く場面では「バカミス!!!」とめちゃ突っ込みを入れた。殺されたはずのリチャードの声が幻?えっ、御手洗そんな非科学的な説明で済ませるの??みたいな。

しかし! そこからの大どんでん返しで本作品は逸品の仲間入りですよ。
まぁこれも突拍子もないし(禁断の双子オチだし)、密室のはめ殺し窓踏み外して脱出って!(褒めてる)とは思ったけど、ピラミッドポンプ説よりずっと現実味があって納得できた。
御手洗の頭の良さも堪能できたし。
レオナの突然の「ホモなの?」発言も良かった(?)。

島田氏の作品はいつも派手だ。
最終的には期待に応えてくれた、満足の一冊だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 島田荘司
感想投稿日 : 2018年8月26日
読了日 : 2018年8月26日
本棚登録日 : 2018年8月26日

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