密室殺人ゲーム王手飛車取り (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2010年1月15日発売)
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本棚登録 : 3946
感想 : 378
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…この作品を「面白い」って思ったら自分が不謹慎な人間な気がして、言うのすごく気が引けるんだけど、でも面白かった。
そう思う自分への嫌悪感に苛まれる作品。

チャット参加者が、人を殺してはその連続性の法則やらトリックやらアリバイ崩しやらをクイズの問題にして出し合うの。
人を殺すことへの罪悪感が全くなくて、怖い。
ある意味みんな狂ってる。
そして、現代にこういう人達が実際に居そうで、怖い。
まとわりつくリアリティが怖い。

はじめは、思い付いたミステリの奇抜な要素を披露し合うだけの連続短編集なのかと思った。
そしたら、だんだん全てを包み込む大きな物語になっていって、俄然面白くなった。

考えてみれば、ミステリ作家って、トリックを思い付いたところから肉付けしたりして作品を作ってゆくんだろうから、フィクションの中とはいえ、この登場人物達と同様の行為をしてる訳だよね。
そういう楽屋裏の作業が作品の核となって表に出てきたところが、この作品の新しさだろう。

ひとつだけ、頭狂人の殺人は警察にバレちゃうんじゃないだろうか。アリバイ工作したみたいだけど、家の中の人でないと殺せない状況だし、部屋から金品出てきたらアウトじゃないだろうか。

最後、あれだけ簡単に(知り合いでさえ!)殺してきた人達が、自分の椅子に仕込まれてるかもしれない起爆装置にパニックになるのが興味深い。こりゃ面白いゲームだね~って悪乗りしていいはずなのに。
多分オフだからだよね。ネットの匿名性というか、ネットで演じている別人格が殺人なんて大胆な行動を後押しするんだろうね…。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 歌野晶午
感想投稿日 : 2018年5月2日
読了日 : 2018年5月1日
本棚登録日 : 2018年5月1日

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