正しい乙女になるために それいぬ (文春文庫PLUS 50-4)

著者 :
  • 文藝春秋 (2001年3月9日発売)
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本棚登録 : 1233
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「乙女のバイブル」と呼ばれた本作には、野ばらさんの美的観念が結晶のように凝固しています。あとがきで野ばらさん本文を「ペダンチック」「青臭い」などと述べていましたが、私はこの増幅系の、歪みきった野ばらさんの文章が大好きだと言うことに今更、本当に今更ながら気がつきました。
『ミシン』や『エミリー』を読んで受けた衝撃、蜂蜜を嘗めるように読んだ甘美な文章、我を貫く少女たち、──「君」と寄り添い、「乙女」と寄り添ってきた数数の文章──それら全てが『それいぬ』に始まり、『それいぬ』に帰趨するのは当然のことでした。今回、ある程度野ばらさんの著作を読んでからこの『それいぬ』を読めたこと、そしてどんな姿の自分であっても、それが傍目からは歪んでいたとしても、それを貫く強さ、「根性」を観測できたこと……私は私を好きな私でありたい。私はいつまでも変わらぬ私でありたい。本書は私にとってもバイブルです。どれだけ朽ち果てていても、美しく、廓寥が静謐であり続ける廃墟となった教会で、いつまでも、いつまでも読んでいたいバイブルです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年3月25日
読了日 : 2022年3月25日
本棚登録日 : 2021年8月14日

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